藤沢 社会
公開日:2025.09.26
追い詰め信じさせる
巧妙な手口 被害者語る
「自分だけは大丈夫」。そう信じる心理を巧みに突き、大金を奪う特殊詐欺の被害が後を絶たない。NTTサポートセンターや警察官、検事を名乗る詐欺グループにより、わずか数日ほどで300万円を騙し取られた藤沢市内に住む60代男性に、犯行の経緯と心理状態などを語ってもらった。
――どのような手口だったのでしょうか。
5月28日に自宅の固定電話へ「NTTサポートセンター」を名乗る自動音声の電話がかかってきました。指示通りに番号を押すと、男が出て「あなたが契約した携帯電話が犯罪に利用されている」というのです。携帯電話番号を伝えると、すぐに非通知で着信があり、「千葉県警に被害届を出す必要がある」と言われました。身に覚えがないと伝えると「こちらから県警につなぐ」と言われ、電話が「千葉県警刑事課のマツモト」と名乗る男に代わりました。マツモトから「詐欺事件の犯人の部屋から、あなた名義の通帳が見つかった。あなたは被疑者だ」と断定的に言われました。
「警察手帳を見せるから」とLINEのビデオ通話へ誘導されたのでつなぐと、制服のような格好をしたマツモトが映り、周囲の様子なども相まって本物の警察官だと信じてしまいました。
その後、外国人のような不自然な話し方をする「隊長のキタガワ」という人物に代わりました。不審に感じましたが、「一緒に無実を証明しましょう」と親身な態度を取ってきたのです。「このことは絶対に誰にも話さない」「1日に3回連絡する」ことを約束させられましたが、「無実を証明できる」と安心しました。しかし、キタガワから「資産凍結令」と書かれた偽の書類画像が携帯に送られ、不安をあおられました。キタガワは「モリタ検事」を名乗る高圧的な男に電話をつなぎました。私が犯人だと決めつけるモリタに対し、キタガワが「○○さんは大丈夫です」とかばう芝居をし、味方のふりをしてきました。
信頼させだまし取る
――送金に至る経緯を教えてください。
キタガワは定時連絡で予定や食事内容を聞いてくるなどこちらを気遣うような様子を見せました。数日連絡を取り合い、同31日に「三井住友銀行からのお知らせ」というショートメールが届きました。口座番号などは書かれていませんでしたが、自身の名前と実際に口座を持つ銀行名、そして300万円を振り込んだという旨の内容が記されていました。何のことか分からなかったので、キタガワに聞いてみたところ、「それは国のお金だから返さないといけない」と言われました。そんなことがあるのかと不審に思いましたが、キタガワから代わったモリタに言われるがまま返還の手続きを進めました。しかし、口座を確認すると300万円は入金されておらず、元からあった自身の300万円しか確認できません。「国のお金だから暗号化されていて見えないだけ」と言われ、おかしいなと思いながらも「被疑者」や「資産凍結」という言葉への恐怖心から、言われるがままに300万円を振り込んでしまいました。すると口座残高は1万円に減ってしまったので、不安になりモリタに伝えましたが、「72時間以内に戻る」と言われ、どうすることもできなかったので信じて待ちました。その後も定時連絡を続けていましたが、6月7日の定時連絡後、インターネットで同様の事例を知ったことで、自分が詐欺に遭っていたことに気づき、通報しました。
――詐欺と分かった時の心境は。
まさか自分が詐欺にかかるなんて、と思いました。失った金額にショックを受け、時を戻せないか、また自死がよぎることもありました。
――不審な点がありながらも、犯人グループを信じてしまったのはなぜでしょうか。
警察手帳で本物の警察だと思ってしまったことが大きいです。誰にも話してはならないと言われ、被疑者だと脅されたり穏やかな口調で味方のように振る舞われたりと、アメとムチによって追い詰められ、騙されてしまいました。
――このような被害をまた出さないためには何が大切でしょうか。
自分がやっていないと思ったら自分を信じることです。追い詰められそうになりますが、弱気になっちゃダメ。振り込む前にまず調べる。不安だったら知人や友人、直接自ら警察に行くなど周りの人を頼ることが大切です。
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