藤沢 文化
公開日:2025.10.31
藤沢市点訳奉仕会
指先に届ける言葉とぬくもり
見えなくても読める本づくり
聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」の開催を目前に控える中、世間では手話への関心が高まっている。一方、視覚障害者の情報伝達ツールである点字は、今年誕生から200年の節目を迎え、あす11月1日は日本で点字が制定された記念日でもある。点字を通じた幅広い奉仕活動を行う「藤沢市点訳奉仕会」に話を聞いた。
同会は文章を点字に打ち直して視覚障害者に届ける点訳や、点字の普及啓発活動を行うボランティア団体。点訳内容は図書や新聞記事の他、時には楽譜や数学の問題など多岐にわたる。
同会独自の取り組みの一つが「指で読む絵本」の制作だ。文章の点字化に加え、挿絵も触って楽しめるように工夫された絵本。同会はこうした絵本を制作し、盲学校や市総合図書館に寄贈している。
制作は本の選定から始まる。本が決まると内容のイメージを膨らませ、「作りたい場面」ごとに担当を振り分ける。絵を再現するため、登場人物の衣服は布、杖は木の枝など、実物に合った素材をメンバー同士で相談。手触りの異なる素材を組み合わせ、絵本を作り上げていく。
以前制作した本の修理依頼など、複数の作業を同時並行で進めるため、1年で完成できる新作は2、3冊。手間のかかる作業だが、「絵本が痛むのは、たくさん読んでくれるから」と前向きに取り組んでいる。
苦労するのは本の厚さだ。絵には中綿を入れて立体的に表現するが、本が分厚くなりすぎないよう細かい調整が必要になる。そうしてできあがった本は「お金で代えられない貴重なもの」なのだという。
同会では他にも、新聞記事や料理レシピ、俳句を点字で紹介する月刊雑誌「藤の花」の発行など、さまざまな形での情報発信を行っている。同会の佐久間淳子会長は「点字の習得には一定の勉強が必要で時間はかかるけれど、一度身につけてしまえば年齢関係なく続けられる」と魅力を話す。実際に、メンバーの中には40年活動を継続している人もいる。
佐久間会長は「視覚障害者にとって点字は情報を得る唯一の手段。喜んでもらえるのが何よりのやりがい」といい、ほほ笑んだ。
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