鎌倉のとっておき 〈第69回〉 鎌倉秋ごよみ
鎌倉の海に静けさが戻る頃、まちなかにも秋の気配が満ちてくる。
鎌倉の秋の風物詩といえば、まず9月中旬の「鶴岡八幡宮例大祭」。由比ヶ浜で神職が海に入り禊(みそぎ)をする浜降式から始まり、若宮大路での八乙女の舞、最終日の八幡宮での流鏑馬神事へと続く、鎌倉時代初期を起源とする歴史と伝統ある行事だ。
9月18日には、坂ノ下の御霊(ごりょう)神社でも毎年「例祭」が開催される。境内で五穀豊穣を祈念する鎌倉神楽が奉納された後、奈良時代からと伝わる伎楽面などを付けてまちなかを練り歩く「面掛行列」が行われる。福禄寿など面掛十人衆からなる行列は、県の無形民俗文化財にも指定されている。
10月上旬には鎌倉宮での「鎌倉薪能」。薪能はもともと、夜間かがり火の中、屋外の能舞台で演じられる能楽で神事として執り行われていたが、鎌倉では1959年から始まり、毎年多くのファンが訪れ、その幻想的な世界を堪能している。
そして11月初旬には建長寺や円覚寺で実施される「宝物風入れ」。両寺院の持つ貴重な書画や仏像などの国宝・重要文化財の虫干しを兼ねて展示するもので、普段お目に掛かれないお宝も拝めるとあって、リピーターも多く人気を博している。
秋の深まりとともに歴史と文化の薫りを増していく古都鎌倉。伝統的な行事や古(いにしえ)の文化財との語らいを通じて、今を生きる喜びを感じさせてくれるまちである。
石塚裕之
|
|
|
|
|
|