鎌倉のとっておき 〈第85回〉 一条恵観山荘〜雅の心
浄明寺バス停の先、滑川をのぞむ場所に、少し前から一般公開されるようになった「一条恵観山荘」はある。
江戸時代初頭に、京都で活躍した皇族の1人である一条恵観が、別邸の離れとして自ら設計し、多くの宮廷人たちをもてなした場所だそうだ。京都西賀茂にあったものを、建物・大小の庭石・赤松などの植栽に至るまで、ほぼそのまま鎌倉に移築し、大切に整備・保存されてきた。
遣り水に沿って散策できる庭園、円窓の美しい茶席、カフェとなっている建物などを巡った後は、説明付きの山荘案内を受けるのがお勧めだ(要予約)。桂離宮や修学院離宮などと同時期に建てられた山荘は素朴な外観ながら、内部は、当時の宮廷人たちの遊び心満載の様々な意匠がこらされている。説明を聞きながら「宮中の人たちはそんなところにまで気を配って客をもてなしたのねぇ〜」と感心してしまう。そして障子を開けると、そこには美しい京風庭園が広がる。赤松の木は、雨上がりに樹皮が一層きれいに見えるそうで、そこまで計算された植栽だという。
「武家の古都・鎌倉」にあって、京の雅と遊び心に触れられる貴重なスポット。一度行って、武家の文化との違いを、肌で感じてみてはいかがでしょうか。
鈴木陽子
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2021年1月15日号
2020年12月18日号