県乳牛共進会で2年連続総合1位を獲得した(有)吉田牧場の取締役を務める 吉田 恵子さん 堤在住 60歳
人と牛へ注ぐ 全力の親心
○…このほど開かれた、乳牛の美しさや飼養技術を競う品評会「県乳牛共進会」。家族で営む牧場の乳牛が、経産の部で総合1位のグランドチャンピオン(農林水産大臣賞)に2年連続で輝いた。市内の牧場では初となる快挙に「今回受賞した牛は、気性は荒いが良く餌を食べ、いつか賞をとると思っていた。自分が見出した牛が選ばれてうれしい」と喜びを滲ませる。
○…堤の農家に、四姉妹の長女として生まれた。祖父は農業を営み、父が牛を飼い始めたことが現在の牧場運営の足掛かりになった。幼い頃から活発で中学では陸上部、平塚農業高では剣道部に所属。「いつか自分が家を支える立場になる」と決意し、それまでは大好きな料理を学ぼうと両親に頼み込んで服部栄養専門学校へ。22歳の時、中学からの同級生である夫との結婚を機に家業を継いだ。
○…夫婦で掲げた目標は「やるからには、神奈川で一番の牧場に」。寝る間も惜しみ、二人三脚で牧場を切り盛りした。乳搾りの傍ら育てた3人の息子たちは、物心つく頃には牛舎で過ごすように。「繁忙期に自発的に手伝ってくれて助かった」。現在は規模を縮小しながらも、跡を継いだ長男が加わり、20頭ほどを飼育。孫も牛と触れ合うようになった。趣味は、料理と茶道。「どちらも黙々と集中できるのが性に合う」と、気さくに話す姿からは想像できない一面も覗かせる。
○…今夏からは、農地を保全する「市農業委員会」に女性初の委員3人の一員として就任。「新規就農者を増やす力になれたら」。牧場では、地元の小学生の見学を受け入れ「牧場のにおいや、糞尿が大切な肥料になること。出産、そして病気の牛が亡くなること。自然の姿を伝えたい」と熱を込める。「農業や畜産業に興味を持つ次世代が出てきて欲しい」と期待を寄せ「人も牛も愛情を注げば応えてくれる」―。これまで2千頭以上の牛を育てたという、大きく深い親心を見せた。
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