エッジな言葉を自己流に昇華させ、強いヒップホップビートに乗せて自身の心の内を吐き出していく。唯一無二の存在感を放ち、他の表現者とは一線を画す茅ヶ崎在住のラッパー・なみちえ(22)にフォーカスを当てた。
ラップや詩、作曲、歌、絵、着ぐるみ制作など、圧倒的な個性を持ち合わせるなみちえのアートワークの幅は広い。その原動力は「社会構造への批判」。スペースシャワーミュージックから3月13日に配信されたアルバム『毎日来日』に収録された楽曲には、22歳の等身大の1人の人間が抱える傷心と苦悩、怒り、悲しみ、社会への疑問などが詰まっている。
「多くの経験が私をつくる」
茅ヶ崎で生まれ育つ。幼少期から絵を描くことが好きで、時間が許す限りクレヨンを握りしめていた。「人と分かり合うより、一人の時間を多く過ごしていた」と振り返るが、そこに悲壮感は感じられない。辛らつな言葉を浴びた過去も全ての経験が気付きとなり、自身をつくり上げているという。
着ぐるみを作り始めたきっかけは「自分が自分の好きなように目立つため」。等身大の形になることに面白さも感じた。中学2年で初めて制作し、これまでに40体ほどを作り上げた。そのクオリティーは高く、メディアで特集を組まれることや他のアーティストから制作依頼も届く。制作当初は自分のために作り続けていたという内省的な動機が、現在は仕事になっている。この春に首席卒業した東京藝術大学先端芸術表現科の卒業作品も着ぐるみだ。「次は“過去の自分を着る”とか、そんなコンセプトで作ってみたい」
フォロワーが1日で千人増
ラップとの出会いは大学1年。学内メールで「ラッパー募集」の文字を見た時だった。独特な言い回しと耳に残るメロディー。学園祭で披露された彼女のステージは、瞬く間に話題になった。
話題になったといえば、1日でフォロワーが千人増加した彼女のツイッター。とあるメディアとのやりとりで感じた理不尽を、ユーモアあふれる文章で投稿した。5千件以上のリツイートがされ、フォロワーも急増した。「若手だから、インタビューしてやってるんだからという意識から芸術家の地位が低くなる構造に疑問を感じる。記者、発注元、撮影者は賃金が払われて、私には払われない依頼があるから。SNSで自己発信できる世の中だからこそ露呈してきた問題です」
音楽を使って社会構造を露呈していくことが大事だと言う。「生きづらい世界。だからこそ、社会への疑問を投げ続けていくことが、私の生きる意味なのかもしれない」
◆出演情報=3月31日(火)「ワンナイト・ハグ〜後腐れないパーティー」@下北沢440
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