平塚市教育委員会は2月3日、「佐波理匙(さはりさじ)」を含む四之宮の山王A遺跡の出土品と、東川斎桂山(とうせんさいけいざん)筆の掛軸「不動明王二童子像」の2件を市の重要文化財に指定した。今回の指定により、市の指定重要文化財は45件となった。
全長264ミリメートルの「佐波理匙」を含む一括資料は1992年、相模国府と推定される山王A遺跡の発掘調査で、建物の柱跡から見つかった。須恵器の破片などがともに出土したことから、建物の地鎮に伴い埋葬された品と推定されている。
佐波理匙の遺跡からの出土は稀で、寺院関連遺跡から見つかる例が多く、今回のように出土状態が明確なことは少ないという。
建物跡は出土した須恵器から8世紀末〜9世紀初頭のものと推定され、市は「地鎮を要する寺院、または役所関連の重要施設の一角では」と説明する。
匙は東大寺正倉院にも同様のものが伝わり、朝鮮半島からの舶戴品と考えられている。出土した匙も当時の中央政府からもたらされたと推測され、相模国府と政府の関係を示す重要な資料だという。
市博物館で展示 匙は常時 掛幅は3月下旬から
「不動明王二童子像」は約30年前、上吉沢の旧家の倉から発見された掛軸。2013年の平塚市文化財保護委員による調査から、江戸末期の絵師、東川斎桂山(藤原美信(ふじわらよしのぶ))による掛軸であることが分かった。
掛軸の大きさは縦110・6cm、横42・8cm。人々を煩悩から救い出すとされる不動明王が、矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制吒迦童子(せいたかどうじ)を従え、炎を背に岩座に立つ姿が描かれている。三尊の装身具などには金泥が用いられ、荘厳な様相を見せている。
調査により、同画の右下には「東川斎 桂山拝書」という墨書と「桂山」・「東川斎之印」の印章が認められた。2箇所の印章は、市指定重要文化財である東川斎桂山の作品と一致するという。
東川斎桂山は1838年から約10年、平塚に滞在した絵師だ。今回の掛軸も、近世仏画的表現やあくの強い筆癖などから、同時期に制作されたと推定される。市は「江戸末期に平塚市域の文化状況を伝える資料として貴重」と説明している。
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「佐波理匙」は市博物館で常時展示されている。「不動明王二童子像」は3月26日〜5月8日、同館情報コーナーで一般公開される予定。
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