花水公民館で日本文学を16年間教えている 安永 享滋さん 桃浜町在住 82歳
「日本文化を伝える架け橋に」
○…源氏物語、枕草子、伊勢物語――。日本文学同好会主催の社会人向け日本文学講座を16年間、花水公民館で開いている。毎月3回、明朗闊達な語り口で、幅広い知識が得られると好評だ。現在、40代から90代までの生徒34人が在籍する。「講座で一番大切なのは、受講者に楽しんでもらうこと」と、教材は自らの足で図書館や博物館を巡り吟味、時事問題や旬のネタを逃さないよう新聞にも目を光らせ講座に臨む。
○…川崎市に生まれる。戦中の疎開で平塚に越してきた。高校時代、「日本人は日本の文化を知らなければならない」という恩師の言葉に感銘を受け、国語教師の道を志す。県内の小学校や高校で教鞭を振るい、タバコ、シンナーといった非行を防ぐ生活指導では「狂犬」と評されるほど心血を注いだ。定年退職後はニュージーランドの大学で日本語を教えるなど、79歳まで教壇に立ち続けた。
○…57年の教員生活で心に残るのは結婚直後の33歳の時、卒業式を間近に控えた教え子が女性教師のスカートをめくり退学騒ぎになった。「どうしても卒業させてやりたい」。辞職願を胸に忍ばせ、校長に直訴。生徒らは一か月の謹慎処分に減免された。謹慎期間中、非行に走らぬよう自宅に招き、両親と共に面倒を見た。3月31日、校長室で迎えた卒業式では、教え子の晴れ姿に目頭が熱くなった。
○…「伝えるには、身をもって経験しなければならない」と、趣味の旅行も勉強に生かす。中国の名所である廬山や洞庭湖を訪れると、杜甫や李白、孟浩然ら詩人が愛した情景に心をゆだねる。京都旅行では、大好きな源氏物語ゆかりの地を探訪、石山寺や賀茂神社といった史跡24か所を巡り、思いを馳せる。日本文学同好会は17年目を迎える。「同好会が20周年、自分が85歳になる3年後まで続けたい」と明言。「日本文学には現代の生活の基礎がある。それを伝える架け橋になりたい」と誓った。
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