二宮町立一色小学校で3月20日に開かれた卒業式で、古正栄司校長が昨年10月に21歳の若さで交通事故死した秋澤瞳さんの生き方を伝える講話を行った。
二宮町で生まれ育った瞳さんは、耳が聞こえない障害を抱えながらハンディキャップに弱音を吐くことなく努力を重ね、千葉県の大学へ進学して環境をテーマに学び、ボランティアやアルバイトにも励んでいた。海外留学も志し、この春からスウェーデンの大学へ通うことが決まっていた。交通事故はその準備を進めている最中、横断歩道を渡っていたところ信号を無視して突っ込んできた車の音に気付くことができずに命を落とした。
二宮町の小学校では今年度、常に前向きに努力を続けた瞳さんの生き方を道徳の授業などで取り上げた。それは「志半ばで亡くなった瞳の生涯が少しでも子どもたちの心に響いてくれれば」という両親の希望でもあった。
「できることを考えて」
卒業式で、瞳さんの生い立ちから亡くなるまでの生き方について話した古正校長は「ずっと努力をして輝き続けていた瞳さんは夢を掴み、もっと輝くはずだった。この話をきいて可哀想と思って終わるのではなく、あなたにできることを考えてほしい。みんなで力を合わせて町を、世の中をもっと良くして、天国で見守る瞳さんが笑顔になれるように頑張りましょう」と一人ひとりに語りかけるように呼びかけた。講話の間、会場は水を打ったような静けさに包まれ、じっと校長を見つめ続ける児童や涙を拭いて聞き入る保護者の姿もあった。
卒業生の三輪柚太郎君は「みんなが同じように暮らせる世界になればいい。自分も誰かが喜んでくれることをしたい」と話し、母・和子さんは「校長先生の『障害のある方に何かお手伝いしましょうかと声をかける以外に、あなたにできることは何ですか』という問いかけが、深く心に響いた。こんなにも温かい言葉で送り出してくれる小学校に通うことができて親子ともに幸せです」と感慨深げに話した。
「子どもだけでなく、保護者や地域の人など一人でも多くの人に聞いてもらいたかった」と理由を明かした古正校長は、新年度を前に「次年度も道徳の教材として高学年の授業で扱っていき、より多くの人に知ってもらえるように機会をとらえて校長自ら語っていきたい」と話した。
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