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国産リール 大磯に原点 町内釣具店が昭和初頭に開発

文化

公開:2019年5月24日

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大磯式木製リールを手にする尾上正一さん
大磯式木製リールを手にする尾上正一さん

 日本最初の投げ釣り大会といわれる「大磯白キス投釣大会」が、6月9日(日)に大磯こゆるぎ海岸で開催される。今では投げ釣りの必須アイテムとなっている「リール」の国内での普及と発展に、大磯の釣具店がかつて重要な役割を果たしていた。昭和初頭に「大磯式木製リール」を考案・開発した尾上榮吉さんのご子息、みとめや釣具店=大磯町大磯=の尾上正一さん(86)から話を聞いた。

 中国が発祥とされるリールが日本で普及し始めたのは、大正時代以降といわれる。相模湾有数の漁場として古くから釣りが盛んだった大磯では、昔から「大縄」と呼ばれる投げ釣りが行われていた。「竹竿に竿の何倍もの長さの縄を結んで、その重さと竿のしなりを利用して遠くまで仕掛けを飛ばす仕組み。縄は麻を太く編んだもので、魚に仕掛けがばれないように、先端に近づくに従ってだんだん細くしていた」。より遠くに仕掛けを飛ばすため、当時輸入品だったリールに改良を加えることを考えたのが榮吉さんだった。

 数代前までは東海道沿いで「三留屋」の屋号で旅館を営んでいたという。「父は列車の運転士だったが、釣り好きが高じて海側の敷地で釣り具屋を始めた」。昭和の初めごろ、木製のリールの回転を高めるためボールベアリングを組み込むことを考案した榮吉さんは、平塚の木地屋へ製作を依頼して「みとめや式木製リール」を販売。これが「大磯式(と呼ばれた)はよく釣れる」と釣り人の間で評判になり、全国から店に購入希望者が訪れたという。昭和4年には神奈川水産会主催の車釣竿部門で2等賞に輝くなど、日本の投げ釣りブームに貢献した。このリールを参考に、直径が大きな「小田原式」や金属・ベークライト・プラスチック製の「横転式」などの発展型リールが国内で次々に作られ、終戦後に現在の主流になっているスピニングリールが入ってくるまで広く普及した。

70年続く投げ釣り大会

 「父はいわゆる『明治の男』。厳格で学究肌なところがあり、店はほぼ母に任せていた。自分も中学生の頃から、リールを買ってくれたお客さんに釣り場まで付いていって使い方を教える役をしていた」。大磯白キス投釣大会は、榮吉さんも加入していた「大磯リール会」が町に持ちかけて、1949年に始まった。当時15歳の正一さんもよく大会の手伝いをしていたという。「会には著名な小説家や写真家、財界人もいて、よく店に来て父と釣り話を楽しんでいた」と振り返り、現在も湘南中央釣具商組合の加盟店として大会に関わる正一さん。「大会も70回を迎えた。昔に比べて自然環境が変わり、魚が減っていることが少し心配だが、参加者が大会を楽しんで帰ってもらえているなら嬉しい」と思いを語った。

 大会は午前7時30分から正午まで。小雨決行(荒天中止)。参加費500円で10歳以上なら誰でも参加できる。問い合わせは大磯町観光協会【電話】0463・61・3300。

考案者の尾上榮吉さん
考案者の尾上榮吉さん

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