厚生労働省によると、団塊の世代が75歳以上となる2025年には高齢者の約5人に1人が認知症患者になるといわれる。
認知症のケアについて理解を深めるための講演会が、二宮町民センターで6月29日に行われた。公益財団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部世話人の三橋良博さんが講師を務め、若年性認知症の妻を10年以上介護している経験を語った。
三橋さんの妻・芳枝さんは、52歳のときに若年性アルツハイマー型認知症の中期と診断された。「実はほっとした。ようやく敵が見えて、妻と一緒にこの病気と闘っていこうと思った」と三橋さん。それまでの約8年間、パニック障害やうつ病と診断され、病院をいくつも訪ねていたからだ。
「脳の5%が委縮するが残りの95%は正常。認知症は恥ずかしい病気ではなく、誤解と偏見をなくしてほしい」。三橋さんは近所の人たちに芳枝さんが認知症であることを公表。すると、妻を介護する三橋さんの身体のことを気遣ってくれる人も現れ、たくさんの人に助けられたという。
53歳で要支援と認定された芳枝さんの認知症は進行。記憶障害や暴言、暴力、徘徊などの症状が出た。高速道路の路側帯を歩き、踏切に入って電車を止めてしまったときは警察から連絡が来た。「一人で介護を背負い過ぎだ」「奥さんの命を守ることが一番大事」。市役所の職員やヘルパー、病院、家族の会などからアドバイスと協力を得て、三橋さんは芳枝さんを専門病院へ入院させた。「多職種による連携の輪が私の周りにできていたことは、ありがたかった」
「認知症の人は何も分からないのではない。優しい対応をすれば鏡のように笑顔を返してくれる。忘れても心は生きている」と三橋さん。要介護5で寝たきりの芳枝さんを毎日訪ね、口腔ケアやマッサージを施す。「生きていてほしい。それがこれまでの人生から導き出した答え」と語った。
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