大磯町の「認可小規模保育施設もあな・こびとのこや」が、4月から大磯郵便局の敷地内へ移転した。新しい園舎には、昭和初期に大磯駅近くに建てられ、18年前に解体された旧三井守之助別荘の建材が使用されている。
三井守之助(1875〜1946)は、戦前の三井財閥・三井連家永坂町家の当主で三井銀行取締役などを務めた人物。茶人としても知られ、巍々庵という茶号も持っていた。1906(明治39)年に大磯の北本町に土地を購入して別荘を構えたが、23(大正12)年の関東大震災で倒壊したため、27(昭和2)年に新しい建物を建てた。旧高松宮翁島別邸(福島県迎賓館/国重要文化財)などを手掛けた木子幸三郎建築事務所の設計で、外観は洋風、内部は和風を主とする和洋折衷のデザインが特徴。清水組(現在の清水建設)が建設した。39(昭和14)年に長男の高篤が相続し、56(同31)年に村田直弥の所有となったが、2003(平成15)年に解体されてマンションとなった。その際に一部の建材が大磯遺産保存会の手により保存されていた。
歴史をつなぐ
園舎は、郵便局の遊休スペース活用のモデルケースとして賃貸借契約を結んだ同園が、大磯郵便局の倉庫だった建物を改装したもの。保存会から譲り受けた三井別荘の古材が、真新しい県産木材に交じって壁材などに使用されており、窓のステンドグラスやパーテーションとして利用する障子をはじめ、園名板にも別荘の出窓に使われていたパーツを活用している。同園を運営する特定非営利活動法人もあなキッズ自然楽校の関山隆一代表理事は「地域に根ざした保育を実践する当園としても、ありがたい話。子どもたちも今はわからなくても、将来この建物のことを知り、豊かな歴史文化のある町で育ったことを感じてくれると思う」と語る。休園日に保育セミナーや地域コミュニティとの交流の場として開放することも検討しているという。
また園舎の隣、郵便局の建物の一角にコワーキングスペース「POST―COWORK」が併設されている。郵便局で使われていたスチールラックなどを活用し、自由にくつろげるオープンスペースや仕事に集中できるコンセントレーションルーム、サーフボードロッカーやシャワー室などもあるユニークな空間。保育園と連携しながら、リモートワークの普及で都心まで通勤する必要がなくなった人が豊かな時間を過ごすなど「地域における新しいライフスタイルの発信拠点」を目指しているという。
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