親子で楽しく歌いながら、優しさやくじけない心、笑顔の大切さなどを伝える歌が、二宮町を起点に広がりを見せている。6月上旬には二宮町の百合が丘児童館と中井町子育て支援センターでお披露目された。歌が作られた背景には、二宮町で育ち、2018年に不慮の事故で亡くなった秋澤瞳さんの前向きな生き方を歌い継ごうという思いが込められている。
「ニコニコおひさまは どんな所にでも優しくほほえんで みんなを照らします。笑顔がつくる みんなの笑顔。ニコニコの笑顔は優しい宝物」――可愛らしくて元気があふれ出るような歌詞と曲調、二宮町でピアノ・リトミック教室を開く一色由利子さんが作詞・作曲した「ニコニコおひさま」の一節だ。歌詞に手話も付け、耳が聞こえない人にもメッセージを伝えられるようにしている。
二宮町で生まれ育った瞳さんは、聴覚の障害に弱音を吐くことなく努力を重ね、大学で学び、ボランティアやアルバイトにも励んでいた。海外留学も決まった矢先、横断歩道を渡っていた瞳さんは、信号を無視して突っ込んできた車の音に気付くことができずに21歳の若い命を落とした。二宮町の小学校では翌年、瞳さんについて道徳の授業で取り上げ、卒業式でも校長が講話の時間を持った。それは「娘の生きた証を残したい」という両親の願いでもあった。
生き方 歌い継ぐ
瞳さんが幼少期に通ったリトミック教室を主宰し、亡くなる6日前にも会話をしていた一色さんは「3年が経ち、一生懸命に生きた瞳ちゃんの生き方を伝え続けるために、自分にできることをしたい」とこの歌を作った。保育士から「ピアノが苦手で」と相談されることが多かったという一色さんは、コロナ禍で生まれた空き時間を利用し、誰でも簡単に弾くことができて子どもの成長に様々な効果がある曲を作ろうと、30曲ほど作曲。その中のとっておきの1曲となった。「単純なリズムとメロディですが、子どもたちには大好評。コロナ禍でも元気に楽しく歌ってほしい」と願う。歌の趣旨に賛同した教室卒業生の野崎亜由美さんが歌詞に合わせた手話を付け、ピアノがない場所でも歌えるようにと知人の作曲家が編曲したバージョンのCDも完成。二宮町を起点に歌を広める活動を始めた。
賛同の輪 広がる
6月3日には中井町子育て支援センターで開かれたリトミック講習会で「ニコニコおひさま」が披露された。親子11組が歌と手話を体験し、歌が作られた背景などについて一色さんの話に耳を傾けた。栗林敦子センター長は「今後も様々な機会で歌い、障害のある人との隔たりのない世の中にしていければ」と話した。二宮町で活動する保育サークル「いち・にの・さん」でも、6月15日に百合が丘児童館で約20組の親子にお披露目された。代表の猿田慶子さんは「可愛らしくて幼児でもおぼえやすい曲。サークルの代表曲にして、歌い継ぐ力になりたい」、瞳さんと手話サークルで交流のあった岸梓さんは「大切なことが込められた歌。障害のある人への理解も進むのでは」と期待を寄せる。
今後、二宮町の幼稚園や保育園、小学校でも歌われ、大磯町や中井町などの周辺にも広がりを見せる。一色さんは「皆さんが瞳ちゃんのことを思い、歌い継いでくれることが願い。子どもたちに優しさや思いやりの気持ちを育んでもらいたい」と話している。
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