昨年から世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス。私たちの健康だけでなく、地域経済への打撃、教育現場に広がる不安など、社会生活のあらゆる分野に影響を及ぼしている。県西1市3町の医療の最前線を担う小田原医師会の渡邊清治会長に対策を聞いた。また、市が2026年度の開院を目指すとする小田原市立病院の再整備について、新病院に期待することなどを取材した。
――新型コロナウイルス感染症の流行に、収束の兆しが見られません。寒さ厳しい冬の時季、特にどのような対策をすれば良いのでしょうか。
「冬だからと言って特別なことはありません。『密にならない』『部屋の換気を良くする』。これが対策のメインです。
感染リスクの高さで言えば、旅行中より、食事中の方が危ない。食事のとき、マスクを外しておしゃべりする場面を何とか減らすことができれば、感染率はすごく下がると思います。マスク以外を使うなら、食事中に話すときだけ、扇で口元を隠すのも良いかも知れません。
冬は寒いから部屋を密閉しがちですので、上手に換気しながら、どのように食事を楽しむか、という工夫が大切。外食するときも、対策がきちんとできている飲食店を選ぶようにしましょう」
――マスクは本当に効果的ですか。
「マスクをしている人同士なら、十分な間隔を空ければ感染率は大きく減少します。一番大切なのは『ウイルスを持っている人がマスクを着用しているかどうか』。うつされないよりも、『うつさないようにする』という意識でマスクをすることが大切です」
――新型コロナウイルスは、変容することもあるのですか。
「飛沫感染で拡大する新型コロナウイルスですが、段々変容してきていると言われています。空気感染するようになる場合もあるとして対策を考えなければいけません。
日本などアジア系に比べ、イタリアやアメリカなど欧米では爆発的に感染が拡大した。このことから、アジア系で感染しているウイルスと、欧米で猛威を振るっているウイルスは違うのではないか、という見方もあります。また、ウイルスを受ける民族の体質の差もあるかも知れません」
――医師と患者の対面を避ける「オンライン診療」という方法もあると聞きました。
「国や神奈川県は、オンライン診療の導入に補助金制度を設けており、地域の医療機関が導入しやすくなるよう、支援しています。私が運営する内科クリニックでもオンライン診療をスタートしました。
ただ、日本医師会も発信している通り『特に初診の人には、オンライン診療ではなく、対面での診察をすべき』と考えています。いくらICT(情報通信技術)が発達しても、一人の患者さんを最初から最後までオンラインで診(み)続けるのは避けるべきでしょう」
――マスク着用や手洗いなどのほか、感染対策として有効なものは。
「禁煙です。タバコを吸う人は肺が弱ってしまう上に、感染リスクの高い喫煙室を利用する場合が多い。狭い場所に集まって喫煙するので感染しやすくなるのです。いまこそ、禁煙外来に力を入れるべきと考えます」
小田原市立新病院建設へ
――小田原市が進めている市立病院の再整備計画について伺います。新病院と現在の病院の大きな違いは何ですか。
「私はこの病院の『再整備基本構想策定検討委員会』の委員長を仰せつかっています。計画では2024年度に着工、26年度に開院を目指す、としています。
現在の病院との大きな違いとして、入院患者一人あたりのスペースの改善が挙げられます。雑居のような病室をなるべく減らし、個室や4人部屋などをメインにしていく。少人数部屋にすることで、利用単価は上がりますが、さまざまな疾患に対応しやすくなる。入院中の患者さんにとって、より居心地の良い病室を目指しています。
市の新病院基本計画では、建設地に関して、現在の病院敷地内に再建すると示しています。ただ時間もかかるし、コストも上乗せされるなど、色々とハードルは高いのも現実です。そうしたコストはなるべく減らす努力が必要です。
10年、20年先には、どういう病院機能が必要とされ、何が廃れていくのか。それを見越して、計画を進めることが大切です。患者さんにも、医療従事者にとっても、活用しやすい病院になってほしいと願っています」