茶畑を維持できない農家に代わり栽培を引き受け、オリジナルブランド茶に加工して販売する藤沢市内の会社が、松田町寄で茶畑の再生に取り組んでいる。2年目の今年はおよそ2・5トンを収穫した。
この会社は、藤沢市で日本茶を製造販売する(株)茶来未(ちゃくみ)(佐々木健社長)。地元農家から引き受けた約70アールの茶畑を自社農園として直接栽培に乗り出した。再生1年目の昨年は1トンの生産量だったが、1年で一般的な収穫量に戻した。
収穫した茶葉はすべて寄の弥勒寺茶業組合(熊澤清組合長)が運営する緑茶工場へ持ち込んで荒茶に加工して、藤沢市内にある自社工場に運び製茶する。
寄が水源地でもあるため昨年は「水を守るお茶」として80グラム1千円で販売した。社長の佐々木健さん(46)は「北に丹沢大山国定公園を望む位置に寄があるので、今年は『丹沢大山茶』として販売したい」と話す。
最盛期から半減
弥勒寺茶工場の佐藤仁工場長(63)によると、この工場は同地で約50年運営している。ここ数年は高齢化と後継者不足で栽培農家が減り、最盛期に35軒の農家で25トンあった集荷量が昨年は25軒、12トンまで減った。今年は10トンを割り込む見通しもあったが、佐々木さんが歯止め役になっているという。
工場は年間15トン以上の集荷量がなければ採算が合わないため、工場経営は年々厳しさを増している。そうしたなか一昨年、弥勒寺の茶農家が藤沢市内で(株)茶来未を営む佐々木さんのもとを訪れ、約70アールの生産を打診。茶畑を見た佐々木さんが同社としては初めて直接生産に乗り出すことにした。
「古木が魅力」
茶畑は20年から30年で改植し若い木に更新するのが一般的だが、佐々木さんが直接栽培に乗り出した畑は50年以上改植されていなかった。
そこで静岡県内の肥料メーカーに協力を求め改植せずに樹勢を回復させる独自の栽培を始めた。
その結果、1年で収穫量が回復したという。「寄には古木が多いが樹勢は回復することが分かった。品質への評価も高く、眠っている畑で生産をしてくれれば全量を買い取れる。担い手は外から募ってもいい」と佐々木さんは手ごたえを感じている。
役場と協定も
今年4月に佐々木さんは松田町役場と地域包括協定を締結した。官民で寄地区のお茶の魅力を発信し、都内の人材派遣会社と協力して職業体験プログラムをつくり町外から人材を集める計画もある。「眠っている地域資源を活用すれば雇用と移住・定住対策にもなる」と話している。
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