高校野球の審判員を21年間務めた 笠間 真二さん 南足柄市中沼在住 60歳
誰よりも公平中立に
○…今夏の第101回全国高校野球選手権神奈川大会の決勝戦、日大藤沢対東海大相模戦で一塁塁審を務めたことを最後に高校野球審判人生にピリオドを打った。「終わったという実感がない。秋季大会でジャッジをしなくなると少しは寂しさが出てくるのかな」
○…球審を初めて務めた試合は今も忘れない。ランナー二・三塁の場面で打球が捕手のミットをかすめ、後方に転がった。両手を高く挙げ「ファールボール」を宣告しようとしたその時、目の前に座った捕手がいちもくさんにボールを追ったのだ。「その一瞬でタイミングを逃した」と振り返る通り、ランナーがホームインして得点につながった。それ以降「自信をもってジャッジすること」を心がけてきた。「今でもあの時のことは覚えている。その後は手が挙げられなかったということは一度もなかった」と話す。
○…印刷会社で勤務する傍ら南足柄市野球協会に所属し草野球や中学、高校の試合で審判員として精を出す。2007年の横浜高校対東海大相模の一戦では後に語り継がれた「振り逃げ3ラン」で試合展開が大きく左右された。これを受けて足柄上、南足柄の学校を対象にルール講習会を始めた。テキストも自前で作成し「意外と分からないことが沢山ある。これを覚えておけば損はしないというルールを教えています」と熱を入れている。
○…「よく見てあげたいという思いが強いほど見えない部分もある」とプレーの最前線の存在であるからこその困難とも戦ってきた。すべては「一度しかない高校野球人生を私たちが簡単に終わらせられない」という一心があるから。定年を迎え、高校野球の公式戦でのジャッジは引退となるがこれからも地元、そして神奈川球界の発展のために右腕を上げていく。