南矢名在住の垣下嘉徳さん(62)が2005年に出版した著書『路上の芸術―マンホールの考察、およびその蓋の鑑賞』。メディアでも多く取り上げられ、ブームとなったマンホール蓋観察の火付け役である同書の復刻版が、2月28日、10年ぶりに発売された。
市の花ナデシコやカタツムリ…これは秦野市の下水道マンホールの蓋に描かれている模様。こうした自治体の特徴あるマンホールの蓋に着目し、鑑賞の手引きなどを書いた本が同書だ。
垣下さんがマンホールの蓋の面白さに出会ったのは1997年の春、大阪府南河内郡太子町でのこと。奈良県から大阪府へと旅行をしていた垣下さん。「疲れてくるとだんだん目線が足元に向くでしょう。その時ふと目に留まったんです」。聖徳太子が制定した『十七条の憲法』の「和を以って貴しと為す」という一文と山と多宝塔の絵、「太子」「汚水」の文字が並んだマンホールの蓋だった。「その時、聖徳太子のファンでもあった私にはショックで、とんでもないものがあると写真を撮りました」と当時を振り返る。
その後しばらくはこの出来事を忘れていたが、高校の国語教師であった垣下さんが翌年に桃太郎研究で岡山市を訪れた際、マンホールの蓋のことを思い出したという。「岡山市には桃太郎を描いた蓋がありました。もしかしたら、神奈川県にも変わった蓋があるのかもしれない、と興味を持ったんです」と話す。
「路上の芸術」
地元に戻った垣下さんは県内の自治体を回って蓋の写真を撮り始めた。その後、調べるうちに下水道が生活する上で重要な役割を持っていること、イメージアップを図るため蓋に工夫されたデザインを採用していることなどを学んだという。こうした研究を踏まえ、2005年に同書を新風舎から刊行。TV番組などでも取り上げられ、同書をきっかけに垣下さんはマンホールの蓋観察の火付け役となった。しかしその後、新風舎が倒産し、同書は長らく絶版となっていた。
復刻の話が持ち上がったのは昨年。東京で行われたマンホールサミットに出席した垣下さんへ出版社のホビージャパンから話があったという。復刻版を出版するにあたり、口絵カラー写真を数点入れ替えたほか、一部加筆・修正をした。マンホールや蓋についての考察や下水道の歴史などにも触れた内容となっている。
「マンホールは道路という額縁に収まった芸術」と話す垣下さん。現在は厚木西高校で教鞭をとっており、「物事を調べることの面白さ、様々なものに関心を持つ楽しさなどを伝えています」と話す。※『路上の芸術【復刻版】』ホビージャパン(本体1800円)
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