鶴巻在住の石井奏子(かなこ)さん(39・本名/田島奏子)が昨年末、若手作家の登竜門である「シェル美術賞」で準グランプリを獲得した。4回目の挑戦で、初の入賞となる。
シェル美術賞は昭和シェル石油が主催する現代美術の公募展で、40歳までの若手作家を対象としていることから画壇の「登竜門」とも呼ばれている。今回は全国から552人807点の応募があった中からの受賞。グランプリ選出はなかったため、2人の準グランプリが最高位となる。「『え、本当に?』という驚きと疑いの方が大きかったですね」と石井さんは受賞の連絡時を振り返り、笑う。
同展への応募は4回目だが今までは落選が続いていた。「チャンスはあと2回。今までは油絵で彩色したものを出していたんですけど、今回は思い切って変えてみよう、と下図みたいなイメージにしました」。長女が実家の庭で熱心に雪だるまを作っている光景を見て、自分の幼い頃と重なり「一瞬タイムスリップした」瞬間を描き起こした。キャンバスに墨やボールペンでスケッチを描いた後、茶色の紙を上から貼り、白で塗りつぶすという技法。その上からさらに描き込むことで、不思議な雰囲気の作品となっている。作品名は『雪の研究』。タイトルにある雪は余白で表現した。審査員長からは「意外にも紙に親密かつ重層的に描き出している。いつまでも判然としない感じが、この画家独自の温もりとなっている」と評価された。
生粋の秦野っ子で、実家の庭をモチーフに描き続けている。「季節によって違うのが面白いんです」と話す。女子美術大学卒業後も、恩師からの「一年に一度は大きい作品を描きなさい」というアドバイスを受け、2000年に上野の森大賞展に初出品、初入選。以来、同展への出品はライフワークだ。今年も応募するため、現在は毎日早起きして朝の1時間を作品制作にあてている。妻として、1児の母として、また物流会社でカタログや商品タグなどのデザイナーとして働きながら、画家としての活動を行っている。石井さんは「見た瞬間に心が軽くなるような、嫌なことを忘れられるような絵を描きたい」と夢を語っていた。
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