市内の分娩件数増加 「お産難民」問題解消へ 診療再開、院内助産が奏功
市内のお産環境が改善している。産科医不足と医療機関閉鎖で約5年前から「お産危機」と言われていた横須賀。2003年度3585件あった分娩数は09年度には2606件に減少。その後、横須賀共済病院の分娩再開や市民病院の院内助産開始などが奏功し、昨年度は約2700件に増加している。
市内の出生数は第2次ベビーブームだった1974年の6653人を境に年々減少し、2011年には2988人となった。都市政策研究所の予測では2019年の市内人口は40万人を下回るとされ、出生数減少は人口流出と同様に課題となっている。市は「不妊治療」「子育て支援」など出産前後における支援を積極的に行う一方、産科医の慢性的な不足、医療機関閉鎖の余波で出産環境の改善に時間を要している。
過去に05年に衣笠病院、07年に聖ヨゼフ病院で産科医の引き上げや退職で休止、診療所でも医師の高齢化などを理由に閉鎖が相次いだ。年5百件以上の分娩を行う病院の受入れ中止で医師・施設不足となり「お産難民」と呼ばれる妊婦が急増。市外で出産する人が増えた。
新たな受け皿として始まったのが市民病院の「院内助産」だ。一昨年、同院も3人の常勤医の一斉退職で分娩の取扱休止を余儀なくされたが、医師不在でも助産師の分娩措置が可能な院内助産を翌年にスタート、出産環境確保に成功した。医師による緊急対応が可能な病院で経験豊富な助産師のケアを受けて出産できる院内助産。希望者は多いが、初産を除いて妊娠経過が正常で比較的リスクの少ない出産に限定されるため年間12件ほどに留まっている。
横須賀共済病院でも一時休診していたが、医師を確保し診療を再開。それにより、09年度約2600件だった分娩数は昨年度2700件に増加した。現在、市内で分娩可能な診療所は4軒、病院3軒(うち1軒が院内助産のみ)、助産院2軒で対応し、お産難民現象はほぼ解消している。
市民寄付で常勤医誘致
市は医療人材の確保を喫緊の課題とし、医療体制の充実化を図るため「いのちの基金」を昨年創設した。市健康部地域医療推進課によると、現時点での寄付総額は約5百万。そこに市の一般財源から同額の5百万が拠出され、総額1千万円が積立てられる。そのうち4分の3が産科医師確保経費の助成を始めとする医療分野整備に充てられ、残りは次年度以降の積立金となる。不規則な労働や訴訟リスクの高さなどが起因し、産科医は全国的に不足している昨今。「助成金を設けても即効性はなく『横須賀で働きたい』と選んでもらえる仕組みを医療機関と連携して探りたい」と市担当者は話す。出産環境の安定は妊婦家族の定住にも結びつくことから、市は現在21人いる産科医数を30人に増員したいとしている。
地域出産を守る助産院
「住み慣れた地元で産みたい」地域の妊婦を支える助産院の役割も大きく、手厚いケアが人気で、産後母子のコミュニティー拠点として機能している。正常分娩限定で、依然として出産=病院というイメージが根強いため分娩数は年100〜150件と少数だが、西逸見のかもめ助産院の鈴木令佳院長は「出産の選択肢の一つとして考えてほしい」と話している。
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