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公開日:2023.04.27

高鳥珠代さん(南希望が丘)
亡父の思い出 小説に
開拓時代の紋別を伝承

  • 自著を手にする高鳥さん

 旭区南希望が丘に住む高鳥珠代さん(60)が、小説『北の開拓村〜父の物語』(文芸社/四六判/1320円)を発刊した。亡き父・相澤三千晴さんが、幼少時代を過ごした開拓時代の北海道・紋別での様子を基にした自伝的小説。高鳥さんは「あまり語られていない開拓時代の北海道の様子や歴史に触れるきっかけになれば」と書籍にしたためた思いを語った。

布団凍る寒さ

 高鳥さんの父・三千晴さんは2019年7月、米寿を目前にがんで亡くなった。病床で「紋別に帰りたい」と懇願し、帰郷したい一心でリハビリにも精を出していたという。

 戦時中、北海道紋別郡渚滑村(現紋別市)で軍馬を育成する酪農家に生まれた三千晴さん。6人きょうだいの3男のため家業を継げないことや、アメリカや都会への憧れなどもあり、終戦後、米軍基地内に飲料品などを納品する仕事に就く。仕事の都合もあり基地を転々としながら、本牧までたどり着き、結婚などを機に中区や港南区に住んでいた。

 三千晴さんは、酔った時や北海道の大自然をテーマにしたテレビ番組を見ている際などに、紋別に住んでいた時の思い出を高鳥さんと弟の2人の子どもに繰り返し聞かせたという。

 専用の機械でハッカ油を抽出するため寝ずの番をしたこと、パチンコで木ネズミ(リス)を獲って食べたこと、あまりの寒さに布団の縁が自分の息で凍ったことなど「信じられないエピソードばかりで面白かった」(高鳥さん)。繰り返し聞かされた話は「父が喋れなくなっても代わりに語れる」くらいになっていたという。

思い出すため伝えるために

 父の死後、しばらく「呆然としていた」という高鳥さん。三千晴さんの母が亡くなる際に「何もしなくてもいい。思い出してくれれば」と言い残したという話を思い出し、「次の世代が『思い出す』には伝えるためのものが必要」と文章として残すことを思いたった。

 元々司馬遼太郎が好きで『元祖・歴女』と自称する高鳥さんは、コロナ禍でテレワーク中心になったのを機に、通信制の大学で歴史学を学ぶ。また北海道を特集する雑誌に、父のエピソードを投稿したり、今回の書籍の基となった文章を出版社に応募するなど、形に残す足掛かりを作る。結果、文芸社から共同出版での話が持ち上がり、書き始めてから約3年かけて、出版にこぎつけた。

 「開拓時代の北海道のことを知って欲しい、伝承したい、という思いで書いた。意識して平易な文章で書いたので、当時を知らない子どもたちに読んでほしい」と高鳥さんは思いを語る。

 現在は福祉施設に勤めながら執筆活動を続ける高鳥さん。今後は「市民でもあり、好きなので、横浜の歴史を書いてみたい」と意欲を語った。

 『北の開拓村』はアマゾンなどのネットショップで購入可能な他、市内の書店でも販売されている。

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