30周年を迎えた朝比奈小学校市民図書の代表を務める 石川 裕子さん 東朝比奈在住
”情熱”が人を動かす
○…近所を歩けば、かつての小学生が「石川さん」と笑顔で挨拶をしてくる。市民図書の活動で培ってきた子どもとの絆。「これは、他のものに代えられない、私の幸せ」と温かな笑顔を見せる。人とのつながりが薄い新興住宅地だからこそ、本を通して「地域のつながり」を深めたい―。そんな思いに共感する仲間と市民図書を始めて30年。「ボランティアの報酬は感動というが、その通りだと思う」。子どもからもらう純粋な感動が活動の原動力になる。
〇…和歌山県出身。大阪で音楽教諭をしていたが、忙しい新聞記者の夫を支えるため結婚を機に家庭に入った。「大勢の子どもを育てる先生はあきらめたけど、自分の子どもは社会の役に立つ人間に育てようと思って」。子育て方針は、前から引っ張るのではなく、子どもの姿を後ろから見てバックアップをすること。「3人の子どもは、それぞれ夢中になる本も違った。その特性をみて育ててきた」。市民図書でもその姿勢は変わらない。子どもの知りたい、読みたいを聞き出して、本への道案内をする。
〇…市民図書の講演会には、女優や小説家ら著名な人物が出演してきた。資金のない中、「情熱」で口説き落としてきた結果だ。「まずなぜ講演を聞きたいか、毛筆で手紙を書く。何枚も、熱意をこめて」と笑う。返事がなければ電話をし、それでもだめなら会いに行く-。万事につけ自ら行動することで、周りを引っ張ってきた。「彼女がいなかったら、ここまでの活動はない」と仲間が太鼓判を押すリーダーシップだ。
〇…「どんなに時代が変わっても、人が大切にすべきことは変わらない」。誠実、頑張ること、信頼―。「私たちがいいと思っていることを子どもたちに伝えていきたい」と語る。その発信拠点である市民図書は、子どもにとっても地域にとっても居心地のいい場所でありたいと願う。「人に会う、本に出合う」場の存在が地域文化を豊かにする。
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