新年の幕開けにあたり、本紙では坂本連・磯子区長に、新春インタビューを行った。大震災以降重要性が増している防災対策や高齢化が進む中での地域活動のあり方、磯子の魅力づくりや商店活性化など、区の課題と今年の方針について聞いた。(聞き手/本紙編集長・水戸浩一)
――まずは昨年、区として力を入れた事業などについて、お聞かせください。
「まずは防災です。一つは区の防災計画を新たに作りました。それを分かりやすいリーフレットにして配布、周知しました。そのなかでも要援護者の地域での支援で、具体的にどのように動けばいいのかを、計画の中に織り込みました。
もうひとつは、災害時の医療体制。磯子区は南北縦に長い地形ですので、医療救護拠点を廃止にした今、災害時には、北部の休日急患診療所と中部の汐見台病院、南部の児童相談所の3カ所に医師や看護師等に集まっていただいて、そこから区内の必要な場所に派遣する体制になっています。
2つ目は、ここ2、3年での取り組みになりますが、地域の場づくりということで、コスモスミーティングなどを行っています。なるべくいろいろな団体の方に参加いただき、地域のさまざまな課題について意見交換をする機会として開催しています。
また、一つひとつの単位の自治会や町内会の取り組みも支援していきたいということで、積極的に区の職員が単位ごとの自治会町内会へ説明に伺ったり、イベントなどに参加するようにしています。
3つ目に、やはり昨年は賑わいづくりですね。9月の磯子まつりでのパレードの復活や健康づくりフェスタの同時開催、磯子の逸品の追加認定、12月の磯子音楽祭、また昨年度になりますが、3月のダンスまつり、さらに定期的に開催している商店街朝市など、やる以上なるべく人が集まるような仕掛けをしました」
――12月の音楽祭は入場待ち列もできていました。近年のイベントで公会堂があれだけ満席になったのは見た記憶がありません。
「最後に出演団体の方たちが揃っての合同演奏や合唱など、あの演出はさすが杉田劇場だなと思いました。あれを見た子どもたちが、磯子音楽祭に出てみたいと思ってもらえるようになると嬉しいですね。新しく始めたイベントは、これからも続けていきたいと思っています。
4つ目は、新しい試みとして、区高齢・障害支援課とケアプラザが連携して行ったエンディングノート講座も大変多くの方に参加していただきました。内容的にも自分自身のことを考え直してもらい、どういう”終活”を望むのか。今の時代、こういうことが必要ですし、おそらく区民の方たちも必要だと思っているから、時代にマッチして人気の講座になったのだと思います。
ノートも磯子区版としてオリジナルに作ったもので、ノートに沿って順番に書いてもらうことで、高齢後期の過ごし方などを整理できる点が、高い評価を受けたのではないかと」
――区長も1度、この講座に参加されたと伺いましたが、いかがでしたか。
「やはりいざ自分のことを書き込もうとすると、難しいですね。私は友達何人いるんだろうとか、考えてしまいますね」
地域の取り組みを支援
――昨年の磯子区を一言で表すとしたら、どのような言葉になるでしょうか。
「笑顔ですね。磯子まつりのパレードに代表されるように、区民の方たちの笑顔がいっぱい見られたと思います。あと昨年は夏祭りやもちつきなど、一つひとつの町内会や自治会が取り組んでいるイベントにも参加させていただきました」
――1年間取材してきて、昨年は全体的に人出が多かったという印象が強く残っています。人を集めようという仕掛けが、随所に見られた気がします。やはり、区長が就任4年目に入り、地域の特性などをより把握できている面もあるのでしょうか。
「例えば、ここの地区はこういった人たちが頑張っているとか、ここの地区は普段はすごく控えめだけれど、夏祭りではとても気合が入っているなど、4年目になって、地域というか、地域の人たちが見えてきた気がします」
自主性醸成が必要
――今年の区の方針についてお聞かせください。
「テーマとしては、地域の自主的な取り組みを大切にしていきたい。そして、その取り組みをしっかり支援していくということです」
――防犯や防災、スイッチON磯子IIなど、区の取り組みを進めるうえで、自治会など地域による「共助」が重要になってきています。一方で、自治会町内会の会長からは、「区から任せられる取り組みが多くて大変」という声も上がっていますが、負担軽減策についてもお聞かせください。
「地域の自主的な取り組みの基本になるのは、やはりそれぞれの地域の人です。一人ひとりがまずは元気で、そして次に、地域で自分のできることに取り組んでいただきたいと思います。
任される仕事が多くて大変という声は、確かに聞いています。そこにあるのは自治会長さんだけ、あるいは民生委員さんだけが大変という面があると思います。これをできるだけ地域の人たちみなさんで受け持ってもらえるよう、工夫していかなければと考えています。
その意味で、広く浅く、一部の人だけではなく一人ひとりの皆さんが元気で、自分のできることで少しずつ協力する。そのようなことに取り組んでいかなければいけないと思います。
区は今年、その支援をしっかり行っていきます。
具体的には、市全体で進めている元気づくりステーションの整備に力を入れます。地域の人たちが自主的に仲間を募って、体操したり、絵葉書を描くといった活動に取り組んでもらう、集まりに参加することで仲間と共に外に出て、元気になってもらう狙いがあります。また、地域で健康づくりに取り組むリーダーを養成する研修も行っていきます。そしてリーダーたちが周りの人たちの健康づくりを進めていく。そのような仕掛けが必要です。さらに区内では、支援センターなどが担い手育成講座にも取り組んでいます」
区内機関と連携
――それ以外に、新たな事業などはありますか。
「まずは、これまで新しく立ち上げてきたイベントを続けることと、より充実させていきたいと思います。
新しいところでは、『磯子みどころガイド』の発行を考えています。梅の名所や磯子の逸品めぐりなど、磯子のいいところをガイドにまとめ、それを手に区内を歩いてもらいたい。
さきほど話した共助での一部の人への負担については、取組エリアをなるべく小さくすることができればと思っています。地区連合単位で実施する事業もありますが、向こう三軒両隣のように、より身近な範囲で取り組んでいただくことで、1人の負担は軽くできると思います。
あとは、区役所と区社協、そしてケアプラザとの連携を強化していきたいと思います。それぞれの部署が地域の少子高齢化対策に必要な情報を持っています。それを共有していきます」
――情報交換会などは現状では行っているのですか。
「これまでも職員レベルでは行っています。地区ごとに区職員と地区社協、ケアプラザの集まりがあります。昨年はほかに、区長とケアプラザ所長との意見交換会も行いました。区としてはこういった方針を持っている、ケアプラザとしてはこんなことを考えているといったように」
――過去そのような意見交換会はなかったのですか。
「ケアプラザのほか、杉田劇場やスポーツセンターとも昨年から行っています。
それぞれの施設は指定管理者制度が取り入れられています。この制度は当初、民間に自由に運営をしてもらい、民間活力を活かそうという目的で始まりました。そのためこれまでは、行政が関わりすぎないようにという考えがありました。しかし、区民にとっては同じ区内の施設。それぞれがばらばらに活動するのではなく、方針がある程度一致していたほうが区民にとってプラスになると思います。
この間の磯子音楽祭は、区と杉田劇場との共催ということで、それが一つの形になったと思います。文化に限らず、互いに方向性やアイデアをぶつけ合って、お任せすることはお任せして共有できる部分は一緒に取り組んで、結果として区民にとって一番いいものができればいいと思います」
――そのほか取り組んでいきたいことはありますか。
「ここ数年で大きな方向性は示すことができたと思います。これからは今までやってきたことを、より着実に進めていきたいですね。
あとは、地域の人たちに実際に避難場所まで歩いてもらい、避難経路や危険箇所などをマップに落とし込む『安心安全マップ』づくりを考えています」
――最後に、区民へのメッセージをお願いします。
「区民のみなさんが1年間、明るく笑顔で過ごせることを心から願っています。私たち区役所も区民のみなさんと同じように、明るく笑顔で元気に対応します。本年もよろしくお願いいたします」
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