2015年の幕開けにあたり、本紙では坂本連・磯子区長に新春インタビューを行った。大震災をはじめとした自然災害への備えや地域の活性化、急速に進む高齢化への対策など、区の課題と今年の方針について聞いた。(聞き手/本紙編集長・水戸浩一)
――まずは昨年、区として力を入れた事業などについて、お聞かせください。
「やはり、地域での自助共助に関する取組を継続してお願いしていまして、区としてその取組への支援に力を入れてきました。
代表的な例としては、安全安心マップの作成です。
2014年度はモデル地区として3カ所での実施を予定していたのですが、募集を掛けたところ20を超える地区でやりたいという希望がありました。これは災害に対する地域の皆さんの心配が元々あって、それに対して地域の皆さんが自分たちで何とかしようという思いの現れだと思います。自助共助という面でもいい取組になりました。来年度もさらに力を入れて実施していきたいと考えています。
もう一つは、賑いづくりです。私が区長になって以来、長年やってきましたけれども、まずは、磯子まつりで産業道路を通行止めにしてのパレードを続けたということ。そして、オープニングセレモニーを道路上で開催し、みんなで風船を飛ばしたことに象徴されるように、賑いや一体感を作り出せました。区としても力を入れたことが、形として、あの溢れるくらい多くの人が訪れた結果になり、それは非常に良かったと考えていますし、力を入れた甲斐があったと思います。
あとは、これは事業ということではないのですが、私自身が地域に入っていく機会を、一昨年よりもさらに増やしました。夏祭りや昼食会などに行った回数が今まで一番多かったですし、特に昨年は、私が行けないところには地区担当の部長や課長、係長といった職員が積極的に参加していきました。区役所全体としても、過去最も参加数が多かったのではないかと思います。
それは、地域の皆さんがどのようなことをしているのかを私たちが知らないと、区の事業というものをちゃんとできないという思いがあるからです。その意味で、地域の人たちが何をしているのかを把握し、何を行政に求めているのかを現場の声として聞くことが大切になってきます。地域に出る回数が増えることで、それが分かってくると考えています」
――では次に、2015年の磯子区の取組を一言で表すとしたら、どのような言葉になるでしょうか。
「2015年を象徴する言葉としては、『歩』です。
一つは、市が現在、健康寿命日本一をめざして、ウォーキングポイント事業を進めていることがあります。シンプルに、『区民のみなさん歩いてください』ということを、今年は訴えていきたいと思っています。
また、自助共助の取組みという面では、区民の皆さんにとっては、地域活動などに一歩踏み出すということが、なかなかハードルが高いのかなと感じています。気持ちの面で、地域や活動に一歩踏み出してみてはどうですかと呼びかけていきたい。そしてそういう思いを持っている方の背中をポンと押してあげたいと思っています。
その二つの意味での『歩』になります」
高齢化対策などに注力
――具体的な取組みについてはいかがでしょうか。
「今年2月に『磯子みどころガイド』が完成します。それを片手にまちを歩いていただきたいと思います。
次に、保健活動推進員が中心になっての出張健康づくり講座を考えています。その中で、先ほどお話したガイドを使ったウォーキングイベントなどにも取り組んでいきます。もうひとつは、高齢者の方になるべく歩いていただきたいということで、歩きやすいウォーキングコースの整備を進めたいと考えています。
「歩」というテーマからは離れてしまいますが、高齢者の見守りについても、新たに取り組みます。特に大きな団地で、ITを活用した見守りの取組ができないかを検討していきます。この取組は、地域の方から要望がありました。具体的に何ができるかを今年から少しずつ検討していきます。
また引き続き、元気づくりステーションも推進していきます。磯子区は他の区に比べても、非常に数が増えています。元気づくりステーションでは地域の高齢者が定期的に集まり、講師を呼んでの体操など自主的な活動を行っています。これも自助共助と健康づくりの面があり、それを進めていきたいと思っています。
もう一つ大きいのは、区別のまちづくりのマスタープラン作りです。そのためには、磯子区の中長期的なまちづくりをどうしたいのかを議論することが大切です。まちづくりの方針を地域の方々などをはじめ様々な方と、3年間かけてしっかり話し合っていきたいと思います」
地域全体での活動広がる
――区長が就任されてから、今年の3月末で丸5年になります。磯子区長としては歴代最も長い就任期間になりますが、その間を振り返って、区としてどのような変化があったと感じていらっしゃいますか。
「区長としてこうしたいという方針があって、それを時間をかけて取り組んできました。磯子は地域の人たちの活動がとても活発で、地域力がとても高いと感じています。その中で、地域の方たちに地域の課題に取り組んでいただきたいという思いがあり、区は活動の場づくりや担い手の発掘や育成を支援してきました。
5年間を振り返って、いいなと思うのは、スイッチON磯子IIの取組です。計画の取組開始がちょうど、私の区長就任と同じ頃でした。計画では、それまで関係者だけが関わっていた福祉や健康づくりへの取組みについて、もっと地域全体で取り組んでいこうというコンセプトでした。それがかなりできてきたと感じています。かつては民生委員や主任児童委員だけがやっていた時代から、自治会町内会や老人会、保健活動推進員など、地域全体で取組みましょうという形が、どんどんできてきました。
逆に防災については自治会町内会だけという面があったのですが、こちらもより幅広く地域のみなさんで担っていこうという意識が高まっています。私が就任以来意図して取り組んできたことが、だんだん形になってきたのかなと思います。
あとはより細かい単位での地域の取組が進んだことです。例えば、これまで高齢者向け昼食会は、地区連合単位での実施が多かったのですが、高齢化が進むにつれて、遠くの会場までいけない方も増えてきました。それならひとつの自治会や町内会、あるいは近くの2、3の自治会町内会で昼食会をやる。そのように、なるべく身近なエリアでの活動を地道にお願いしてきました。手を挙げてくれるところには、補助金を交付するなど、区も方向性をしっかり示すことで、この取組もかなり進んできました。
5年というスパンで見ると、やはり磯子区の活性化でしょうか。商店街朝市は3年目、ダンスまつりが3回目、音楽祭も2回目、磯子まつりのパレードも2年連続、磯子の逸品は4年間で2度の認定とスタンプラリーも2回行いました。見極めは大切ですが、1回だけやって終わりではなく、区役所とともに、区民のみなさんが良いと思っていることは続けていって、定着させていくことが賑いづくりの面では大切だと思っています。それがこの5年間、うまくいったと思います」
――では、より改善が必要と思われる点は。
「まずは、災害に備えた要援護者の支援体制づくりです。いろいろと取り組んでいますが、難しくてなかなか進んでいません。高齢化も進んで、支援する人も高齢になってきています。地域の人たちが何に困っているのか、必要としていることは何かを把握し、支援をしていきたい。
福祉面では、区社会福祉協議会やケアプラザとの連携や情報共有化を、もっと深めていかないといけないと思っています。ここを深めれば、より地域の取組や要望が把握でき、支援も一体的にできると思います」
――最後に、区民へのメッセージをお願いします。
「今年は『歩』ということで、ぜひみなさんに歩いていただきたいと思います。また、私も区の職員ももっとまちへ、地域へ出て行って、区民のみなさんと顔を合わせていきます。それを通じて、誰からも『好きです』と言ってもらえる、暮らしやすいまち磯子を一歩一歩作っていきます。この1年、区民のみなさんが明るく元気で過ごされることを心から願っています」
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