中原に住む田原和夫さん(85歳)が17年前に著した体験記『ソ満国境15歳の夏』(築地書館)が映画化され、8月22日から横浜シネマリン(中区)で上映される。この作品は、敗戦後、当時のソ連と満州国の国境に取り残された中学生たちが故郷をめざして集団逃避行する物語。映画化に際し、原作者の田原さんに思いを聞いた。
同著は、終戦の年の5月に当時のソ連と満州国の国境付近へ勤労動員に送られた中学生たちが、敗戦直後、現地に取り残され、故郷の満州国・新京(現在の長春)へ帰る過酷な道のりを描いた体験記。ソ連軍に捕らえられて収容所生活を送ったことや、級友たちが命を落としたこと、飢えの極限状態だった自分たちを現地の人が家に泊め、温かい食事をふるまってくれた体験などが記されている。
戦時の異常さを記録
著者の田原さんは、終戦の翌年に日本に引き揚げ、長年勤めていた仕事が一段落した60代半ばごろから執筆活動を始める。自分たちが動員に選ばれた理由や、国民を守る軍が自分たちを置き去りにしたことなど、戦争の責任追及の意味を込め「この異常な経験を記録に残さなくては」と筆を執ったと話す。
構想から10年経て完成
刊行後、中学時代の友人が仕事の関係で付き合いのあった中国人に同著を紹介。そのストーリー性から作品の映画化を薦められた。構想途中に企画が頓挫したこともあったが、日本大学芸術学部映画学科の教授で、作品の監督を務める松島哲也さんの協力もあり、昨年末、10年の制作期間を経て映画が完成した。
物語は、東日本大震災後、避難生活を余儀なくされている福島県の中学生が、70年前の戦争で当時15歳の子どもたちがソ満国境で体験した逃避行中のエピソードを取材するというもの。
田原さんは、自身の経験と3・11後の福島県の子どもたちの姿を絡めたシナリオについて、「70年前の我々の経験と震災時の原発事故の責任問題が重ねて描かれている。単なる戦争の記録映画ではなく、今日的な意義のある作品になっているのでは」と話す。
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