〈連載【10】〉「産業展」に45事業者 懸命のアピール合戦 IRと横浜
統合型リゾート(IR)に関するビジネスを紹介する展示会「統合型リゾート産業展」が1月29日、30日にパシフィコ横浜で行われた。
ブースでダンスショー
展示会企画会社などが主催したもので、横浜では初開催。6つのIR事業者や建設会社、関連サービスを扱う45事業者が参加。すでに海外でカジノを含むIRを運営し、横浜への参入を目指す米国の「ラスベガス・サンズ」「ウィン・リゾーツ」、香港の「メルコリゾーツ&エンターテインメント」といったIR事業者はブース内でダンスショーなどのパフォーマンスを披露。経営トップの講演もあり、IRの方針を示した。
参加したIR事業者の中で唯一の日本法人である「セガサミーホールディングス」は、産業展会場で京都の有名店「京都吉兆」の料理を提供。同店とプロデュース契約を結び、IR施設内に料亭旅館を設ける計画を明らかにした。さらに、同社が母体の「セガサミー文化芸術財団」が4月に中区北仲通にダンスパフォーマンス拠点を開設することも発表。同社は昨年9月に赤レンガ倉庫で音楽とダンス、ドローンを組み合わせたショーを3日間開催。産業展で講演した里見治紀社長は「ショーを観た方からは『これが無料で観られるとは』と喜んでいただいた。IRに参入できれば、このようなショーを横浜で毎日開ける」と自信をのぞかせた。
「決定まで静観」も
すでに横浜では事業者によるアピール合戦が始まっており、知名度アップを図ろうと、イベントへ協賛金を出したり、駅に広告を掲出する事業者もある。しかし、産業展に出展した別の事業者の担当者は「正式にIR誘致が決まるまでは、イベントや協賛などの目立つ動きはしづらい。今はIRを正しく理解してもらうことが重要」と当面は静観する構えだとした。
29日は会場のパシフィコ周辺や桜木町駅前でIR誘致に反対する市民団体らが「横浜にカジノはいらない」などと書かれた幕を掲げ、産業展の来場者らにアピールする姿も見られた。
〈連載【11】〉市が方向性素案公表推進前提に意見公募選ばれる目的地に
横浜市は、IR(統合型リゾート)の方向性を示す素案をホームページなどで公表し、4月6日まで市民から意見を募集している。
市が2020年代後半を目標に山下ふ頭への整備を目指すIR。素案で示された基本コンセプトは「横浜イノベーションIR『横浜を世界から選ばれるデスティネーション(目的地)へ』」。会議場や展示場などのMICE施設やホテル、劇場、カジノなどのエンターテインメント施設からなるIRと臨海部の魅力を融合して、世界各国の人々が「日本に行くなら横浜に行ってみよう!」と思ってもらえるようなIRをめざす。
このコンセプト実現のために示されたのが【1】世界最高水準のIR実現【2】都心臨海部との融合【3】オール横浜による観光・経済のイノベーション、そして【4】安全・安心対策の横浜モデルの構築だ。
安全・安心対策示す
4点目は市民からの不安にも配慮し、負の側面を取り上げている。
IRを構成する一つであるカジノはギャンブル依存症、青少年への悪影響、マネー・ローンダリング、反社会的勢力の関与、治安悪化などが懸念されている。依存症に対しては対策基本法に基づいて県が20年度中に策定する基本計画に沿って対策を進めることや、医学部を持つ横浜市大の役割強化をうたう。
また市独自にIR事業者に対して依存症の普及啓発や24時間の相談体制などを求める。治安対策については法令に基づき県、県警察、事業者と連携して未然防止を強化する方針だ。
「方針撤回はない」
素案はIR実施方針の方向性を説明するもので、経済効果などの根拠や懸念事項への詳細な取組は示されていない。また林文子市長は、記者会見などを通じ意見募集はあくまでも有用な意見を政策に反映させるもので誘致反対が多く出されても方針を撤回することはないと明言している。
市は、意見募集を踏まえ今年6月にIRの実施方針を公表。20年度中に事業者を選定し区域整備計画を策定後、市会議決を経て21年度前半に国に申請したい考えだ。
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