「団塊の世代」の高齢化を見据え横浜市は、2013年度の当初予算に自宅で診療などを受ける「在宅医療」体制の整備に向けたモデル事業(2300万円)を盛り込んだ。その対象となるのが西区。市医師会と協働することで、まずは医師会立の訪問看護ステーションを「在宅医療連携拠点」に定め、10月の開設を目指す。
西区がモデル地域として選ばれたのは、市医師会の在宅医療担当のメンバーが同区で開業していることや、区内に高齢化が進む地域が多いことなどがあげられる。担当者の一人、増田英明医師(58)は「全国に先駆けた取り組み。まずは一歩踏み出した」と同事業の意義を語る。
この新規事業は、かかりつけ医の積極的な在宅医療への参加と、夜間対応における医師らの連携体制の整備に取り組むもの。また、入院施設を持つ病院と診療所との橋渡し役を担う。
市は、医師会立の施設が拠点となることで、在宅患者の主治医や副主治医体制を維持・強化するとともに、容体急変におけるスムーズな入院先の確保など、高い総合調整能力を期待する。
来年度以降、市は西区の先行モデルを検証し、全18区で医師会立の訪問看護ステーションを活用し同様の事業展開を見込む。都市部において、全市域に医師会立の施設が整備されていることは珍しいという。
市地域医療課では「西区のケースを検証して、需要に対応できるよう拠点を加速度的に整備する必要がある」と話している。
高齢化する「団塊の世代」
地域における在宅医療体制の整備が必要とされる背景には、いわゆる「2025年問題」がある。
団塊の世代が75歳以上となり、医療機関の需要急増が予想される。しかし、この高齢者の増加は一時的な現象のため、病院側の大幅な病床数増加は見込めず、在宅医療の役割が注目されることになった。
市の資料によれば、11年に32万9千人だった75歳以上の人口は、25年には58万6千人と1・7倍に。在宅医療を必要とする人は、11年現在で1日に2800人のところ、25年には同5600人と2倍の伸びが予想されている。
そこで課題になるのが在宅医療を行う診療所の数だ。診療報酬などでインセンティブが与えられているものの、夜間対応など医師の過負担から、増加傾向は見られない。
その現状において「医師会が在宅医療体制の整備に舵を切ったことはとても重要」と地域医療課は指摘する。公的団体である医師会と行政が協力することで、「医師の負担軽減をはかり、安心して在宅医療に取り組める環境を整えることで、対応する診療所の増加につながれば」と話した。
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