本牧 気まぐれ歴史散歩 55 『根岸外国人墓地』 たくさんの命が静かに眠る場所
横浜が開港場になると、居留地ではたくさんの外国人が暮らすようになりました。日本で暮らして生涯を終える外国人が増えていくと、外国人の墓地も山手だけでは手狭になったことから、明治35(1902)年から、現在もJR山手駅近くの静かな木立の中にある根岸外国人墓地にも亡くなった人々を埋葬するようになりました。
ところで、根岸外国人墓地で眠る人たちの中には、不慮の死、無念の死を遂げた人たちも多く眠っています。ひとつは関東大震災で被災し、亡くなった人たちです。もうひとつは第二次世界大戦中に横浜港に停泊していたドイツ軍艦の爆発事故により亡くなったドイツ水兵たちです。事故とは言え、戦争が起こらなければ遠い異国で亡くなることもなかった61人の命です。そしてもうひとつが、記録や明確な資料が残されてはいないものの、戦後の混乱期に生まれ、育つこともないまま亡くなっていった数百人の嬰児たち...たくさんの小さな命がここには眠っている、ともいわれています。
ここを訪れると、いつも改めて震災の恐ろしさ、命のはかなさを感じます。また、誰も幸せにしない戦争の愚かさを感じます。震災は人類の力で防ぐことはできません。しかし戦争は、人々がその原因を作り、起こすことがなければ、失われる命もありません。
次回は、下りてきた坂道をまた登って、路地を歩いていきたいと思います。(文・横浜市八聖殿館長 相澤竜次)
|
|
|
|
|
|
|
<PR>