障がい者の社会参加と経済的自立を推進することを目的とした社会貢献事業「パラリンアート」。障がい者アーティストと1つのチームになり社会保障費に依存せず、民間企業・個人の継続協力で障がい者を支援するこの取り組みが、プロスポーツ選手や芸能人などもこの活動を応援するなど近年、大きな注目を集めている。
独自の世界観と独創的な色彩で彩られたアート作品は多くの人々に感動と驚きを与え、海外では芸術家として高く評価される作家が数多く活躍している。一方、日本の障がい者アーティストとその家族の多くは経済的に困難な状況で生活し、将来に大きな不安を抱えていると同時にアーティストとしての活動に一般社会との結びつきが得にくいことも現状だ。
障がい者雇用の現実
昨年は中央省庁の障がい者雇用水増し問題が大きく報じられた。現在、日本では全人口の約6・7%(約860万人)の人々がなんらかの障がいを持つと言われている。そのうち公的・民間企業に就労している障がい者は50万人程度に留まっている実態がある。
民間企業などでの就労が難しい場合には、授産施設などで就労せざるを得ない状況だ。授産施設ではパンや手工芸品作り、清掃作業などにより収入を得ているが廉価な商品やサービスであるため、売り上げとしては決して高くない。その結果、授産施設などの平均工賃は障がい者の経済的自立には程遠い額となっている。
捨て置かれた1枚の絵
訪問リハビリマッサージ事業を手掛けていた人物が捨て置かれた絵に出会った。これが「パラリンアート」誕生のきっかけとなる。
政府も障がい者雇用を進めてはいたが、障がい者の多くは寝たきりなので働きに行くこともできない。何とか生きがいとして社会とのつながりを持ち、所得を上げることはできないかと考え、2007年に絵画レンタルモデルを企画構想。収益の50%を作者報酬として支払うモデルで「パラリンアート」が産声を上げた。
取り組み開始から12年、「パラリンアート」は現在、一般社団法人障がい者自立推進機構が運営する。いまでは全国47都道府県から約750人の障がい者がアーティストとして登録。大手企業もオフィシャルパートナーとして活動に参加するほか、有名サッカー選手や五輪出場選手、芸能人などがスペシャルサポーターに就任し、活動を後押しするなどし注目度が増している。
企業の商品カタログやカレンダー、百貨店の空間デザイン、ノベルティグッズなどに採用されるなどして、今年度は昨年9月末までに54人のアーティストが報酬を獲得。その報酬額総額は500万円に迫った。事務局の神成麻衣さんは「障がい者が描く絵に大きな魅力を感じる。絵を通じて多くの障がい者が社会との接点をもつことができれば」と話す。
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