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神奈川区 人物風土記

公開日:2015.10.22

勤務先の理髪店で始めた「5円募金」を区へ寄付した
高木 兼夫さん
西神奈川在勤 75歳

生涯現役、みんなの「オヤジ」

 ○…理容師歴60年の大ベテラン。東日本大震災をきっかけに「何かできないか」と、2011年5月から勤務先である西神奈川の理容スミレで「5円募金」を始めた。行きつけにしてくれている利用客の厚意で集まった金額は約5万円。わざわざ5円玉を貯めている人もいたといい、「一つひとつの5円玉にお客さんの思いがつまっている」と、区へ寄付できたことに笑顔をみせる。

 ○…静岡県島田市生まれ。5歳で終戦を迎え、生計を支えるために母と一緒に東京へ通った。「有楽町のガード下で母は野菜売り、私は靴磨きをした」。地元では新聞配達をし、牛乳や納豆も売った。「中学校の先生がいつも買ってくれて。卒業するとき、奥さんが緑色の靴下をプレゼントしてくれた」と、今でも無意識に緑色のものを身につけるほど心に残る。

 ○…上京するも、製菓工場での重労働で体調を崩し帰郷。「(手に職をつけた方がいいから)床屋になれ」という叔父の一言で理容師の道を選んだ。住み込みで働きながら専門学校へ通い、24歳で開業。しかし大家の都合で店を閉めることになり、名古屋や東京で郵便局員用の理髪店などに勤めた。銀座では15年ほど店長として店を支え、オーナーの息子の面倒もみた。「もう50代だけど、当時私が教えた『(経営者こそ)トイレ掃除をしろ』というのを今でも守っているらしい」と照れ笑いする。

 ○…60歳を前にして渋谷に再び自身の店を構えた。「母の看病でお金の工面も大変だったから9年でたたむことになってね」と寂しそうな表情をみせる。そして出会ったのが今の店。70歳を迎えた玄人を歓迎してくれた。今では利用客に”なんだ、今日オヤジいないのか”と言われることも多く、ときには東神奈川の焼き鳥屋で酒を飲み交わすこともあるという。「お客さんや仲間との出会いは良いものだ」。生涯現役でハサミを持ち続ける。

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