多摩区・麻生区 文化
公開日:2021.01.29
第3回川崎市地域文化財を紐解く【2】
安穏見守り鎮座150年
登戸・榎戸の庚申塔
登戸1968番地先、二ヶ領用水にかかる小泉橋の袂にある「榎戸の庚申塔」。1870(明治3)年の建立以降、地元で「庚申さま」と呼ばれ親しまれてきた存在だ。
高さは台石もあわせて約2・5メートル。正面上部には日月と雲、富士山形が彫られ、中央に「庚申神」と刻まれている。右側には「天下泰平五穀成就風雨順時」の文字、上台石には「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿。裏面に世話人の名が連なる。
この庚申塔は、江戸時代に盛んだった富士講の一つ・登戸の丸山講(現在の丸山教)によって建てられたもの。登山前に庚申塔の前で拝んで安全祈願をし、下山後も参拝する、富士信仰の大切な場だったという。稲田郷土史会の鶴見邦男会長は「庶民の間に広まった中国の庚申信仰と富士信仰の2つの信仰を併せ持つ、複合的なもの。地域で守られ、長年愛されたスポットだった」と解説する。戦前には毎年正月、元旦祭と同時に大勢の人が参加する「ミカン投げ」という行事も。戦後も元旦祭は続き、今でも登戸新川町会が受け継いでいる。
庚申塔は長きにわたり当初の位置に鎮座していたが、1991年に二ヶ領用水の改修工事で仮移転。2006年には登戸土地区画整理事業のため再度移転し、2015年に元の小泉橋そばへ戻ってきた。登戸新川町会の久保山義夫会長は「町会の中心的な場所。長年見守ってくれている」と思いを寄せた。
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このコーナーでは今年度の第3回川崎市地域文化財に選ばれた文化財を紹介します。
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