中原区 社会
公開日:2021.01.01
水害対策を考える【1】
多摩川から学ぶ「土地の記憶」
俳優・中本賢さんに聞く
川崎市内に爪痕を残した東日本台風。とりわけ思い出すのは、自然の恐ろしさを見せつけた多摩川だ。普段は気にも留めない存在という人も多いかもしれない。しかし、ひとたび牙をむけば容赦なく襲ってくる。今後、また来るかもしれない洪水や水害を、私たちはどのように予想し、備えればよいのか。その疑問に向き合うためには、まずは多摩川を知ることが大切だ。詳しい先人たちに話を聞くことにした。
◇◇◇
区内の子どもたちに多摩川の魅力を伝え続けている人がいる。俳優の中本賢さんだ。賢さんは1985年に多摩川近くに引っ越してきたことをきっかけに、息子さんと多摩川遊びを開始。高度成長期に汚れてしまった多摩川が自然環境を回復していく様子を、30年にわたり観察している。
「川崎の、特に中原を流れる多摩川の特徴は、川と海の境目がせめぎ合っている場所だということ。海水は潮の満ち引きによって丸子橋直下まで遡ってきます」と笑顔で話す賢さん。
中原区で川と海のせめぎ合いがわかりやすいのは春だという。土手や河原は「ハマダイコン」の花で白く染まる。賢さんによると、ハマダイコンは本来、海岸線の砂浜などに咲く花だが、沿岸に流れ出た種が、多摩川を遡る海水によって内陸に運ばれて分布を広げたという。現在、上流端は高津区の二子新地あたり。そこから上流はハマダイコンの自然分布は広がらず、菜の花の黄色に変わる。白と黄色の境目が海と川がせめぎ合っている場所、という訳だ。
花咲く場所の意味
「よーく観察していると、山からの影響も見て取れます。植物に限って言えば、河川敷の大半を占める植物は、上流から増水時に分布を拡大させ定着したものが殆ど。例えば、2019年の東日本台風の増水で浸かった土手には、翌年の秋にその水位に沿って『セイタカアワダチソウ』が繁茂しました」と賢さん。
気にも留めない雑草が、何故その場所で咲いているか、その意味を考えて調べると、意外な事実が見えてくる。賢さんによると中原区内には水気のない川から離れた場所でも「ツクシ」や「フキノトウ」を目にすることができるという。これらは本来、田園地帯の水路脇などで芽を出すことが多い植物。近くに川や水路が見当たらなくても、かつてその近くに水辺があった可能性が高いという。「排水路が埋め立てられたり、遠い昔に多摩川が流れていた場所だったり。見た目は変わっていても、土が記憶しているという感じ」
動植物がありのままの地域環境を伝えていると確信している賢さん。このほかにも、川の近くにある「お宮」の位置について、何故そこにあるのか調べてみると防災につながる地域文化と出会うことも多いという。
「川崎は、暴れ川と呼ばれた多摩川の先っぽにある街。遠いご先祖さまたちはこの恐ろしくてありがたい、多摩川と共存する暮らしを実践していました。自然を肌で感じる暮らしです。恐れるだけでなく、自分の街にどんな自然特性があるのか自身で感じてみる……毎日の散歩に生かしてみてはいかがでしょうか」。賢さんが投げかけるメッセージには、未来へのヒントが詰まっている。
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