神奈川県住宅供給公社が運営する賃貸マンション「フロール元住吉」(中原区)は、2020年3月の入居開始より同公社初の"コミュニティ賃貸住宅"として、住民同士あるいは、地域と住民とのゆるやかなつながりづくりを目指してきた。竣工5周年を迎え、その試みが現在どのように広がりを見せているのか、コミュニティ運営を担ってきたHITOTOWA INC.(東京都)の「守人(もりびと)」担当者に話を聞いた。
いざという時に助け合える関係を
フロール元住吉は一般的な賃貸マンションとは違い、人と人とが関わる機会が自然に増えるような機能、入居者や入居者以外も利用できる共用部が特徴だ。1階右手に住民用シェアラウンジがあり、左手の受付には、「守人」という呼称で呼ばれるコミュニティ運営担当が常駐。通常のマンションの管理人のように共用部利用時の対応や館内点検という管理業務の他、入居者のコミュニティを育むためイベントを企画・開催している。また1階には地域交流スペース「となりの.」が設けられている。こちらはカフェとレンタルスペースで、マンション以外の地域住民も利用可能となっている。災害などいざというときに助け合える、つながりづくりを目指している。
入居開始時期はコロナ禍ということもあり、シェアラウンジには、突然在宅勤務となった住民が多く訪れるように。当初はあまり机を置いていなかったが、当時テイクアウト営業のみになっていたカフェから机を移動させ、作業スペースとして活用できるよう臨機応変に対応したという。
また、コロナ禍から日常に戻ってきた頃には、マンションのエントランスを活用した地域にも開かれた夏祭りのイベントや、カフェスペースを使った栄養士の健康相談、子育てサロン、子どもの放課後サポートなどが精力的に企画された。今年の3月には入居開始5周年記念イベントのコンサート等が企画され、2回のイベントにのべ100人が参加した。
一方で、2023年に「守人」業務に加えて、入居開始時にはバリスタが担っていた「となりの.」のカフェ業務運営にも挑戦した際には、「コミュニティづくり」と「カフェ経営」2つの業務の同時並行に課題が発生した。最終的には、飲食業と場づくりのノウハウをもち、以前からパートナーとして協働している株式会社Yuinchu(東京都)に相談。2024年5月からは、株式会社Yuinchuがカフェ経営を行い「TONARINO. by SWITCH STAND」としてリニューアルオープンした。
新体制になってからは「守人」の業務に専念。時間の余裕もでき、現在では守人メンバーそれぞれの得意分野を生かして、企画、広報、イベント運営などスムーズに業務を推進している。「最初は交流イベントに対し積極的でなかった住民の方も、だんだん声をかけてくれるようになってやりがいを感じる」とは守人スタッフの一人。守人が主導してきた企画も、今では一緒に作りあげたり、住民が主導する企画が多くなってきたという。現在では、守人で月2回ほど住民の交流イベントを企画している。
取材した4月19日は、入居者の交流会「お花見の会」が行われており、1Fのシェアラウンジに親子ら約10人が集まった。お互いに「出身地」「好きな食べ物」などを自己紹介し、共通項がある際にビンゴカードの穴をあけるビンゴゲームなどでなごやかに交流した。イベント参加が2回目という住民は「今度子どもが生まれるので、保育園や近くの遊び場など、先輩ママさんの情報をいろいろ聞けてよかった。またいろいろなイベントに来てみたい」などと感想を話した。
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