麻生区版 掲載号:2019年2月1日号 エリアトップへ

柿生文化を読む 第143回 シリーズ「麻生の歴史を探る」入会地騒動 前編参考資料:「ふるさとは語る(柿生郷土史刊行会)」「町田市史」「川崎市史」「新編武蔵風土記稿」

掲載号:2019年2月1日号

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 江戸時代、田畑の検地は進みましたが、山野の帰属は曖昧で、新編武蔵風土記稿上麻生村の項に「地頭林一ヶ所字山口にあり、秣場(まぐさば=入会地)下麻生村と入会して東の方にあり」と記され、片平村の項には「御林三ヶ所、辰の方にあり、凡そ一町八反ばかりなり、秣場も西によりて小許(小面積)あり」と述べており、山林には領主が支配する地頭林(御林)と秣場があったことが示されていますが、農民が百姓林を持っていたかははっきりしません。一つの参考として、寛永9年(1632)の王禅寺村農民所持田畑反別表には「山」の記載はなく、それが83年後の正徳5年(1715)の同記録(市資料・いずれも志村家資料)には、山林の個人所有が面積ではなく「箇所」で表され、それは一部の富裕農民に偏っています。

 多摩丘陵の中核であるこの麻生の地はその5〜6割が山林原野ですが、古くは北条氏以来、田畑を年貢の対象とする検地は山林には及ばず、したがって村の石高、お縄打帳にも記載されていませんでした。と言ってこの山林原野が価値がないものではなく、農民には牛・馬の飼料、肥料、屋根ふきの茅場、そして建築資材生産(今でも谷戸には檜谷・杉山下などの地名が残っている)と、日常生活に欠かせない資源の地でありました。

 江戸時代、この山林原野の管理(所有)を大別すると領主と農民に分かれ、領主持ちの山林をお林、地頭林、お留山などと呼びました。農民持ちの山林は個人持ちはわずかで、多くは一定の山野(百姓林)を一定の集団(村)が共同で利用し、これを「入会地」と呼びます。その入会地は一ヶ村だけで利用するのを内野と呼び、近隣の村々で共同利用するのを「共同山」と言いましたが、そこには村という自治体の利害が絡んでの争いが起きてまいります。

 寛永7年(1630)6月、王禅寺村と麻生村の間で秣場(草場)争いが起きています。それは麻生村農民が王禅寺村が育てた秣場に早朝押し入り、草茅を刈り取り逃げたとするもので、鎌17本を押収、奉行所に訴えます。これに対して麻生村側は、秣場の従来からの慣行と主張、王禅寺村側は北条氏直の「虎の印判状(御改め)」を取り上げて論争したといい(市資料・志村家文書)、結局は幕府の開設当初山林の帰趨は曖昧だったことを表したもので、決着は資料にありませんが、その後も王禅寺村・下麻生村・上麻生村3村共同利用入会地12町歩余ありましたので、村と村との話し合いはなされていたのでしょう。

【後編へ続く】

※そしやう=訴訟
 

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