幸区を活動拠点とする剣誠会所属の小林隼人さん(29・南加瀬在住)が、5月に愛知県で行われた全日本剣道連盟の六段審査会に最年少の28歳(当時)で合格した。小林さんは「5年間、六段に向けて準備をしてきた。合格してほっとしている」と喜びを語った。
剣道の段審査は初段を受けられるのは一級を持つ満13歳以上。二段審査には初段になってから1年以上、三段審査には二段になってから2年以上など段位と同じ年数の修業期間を経る必要がある。28歳での六段は初段から一度も審査に落ちない最速での合格だ。剣誠会によれば、ここ10年の六段の合格率は平均21%で、28歳の合格者は全体の0・07%だという。
小林さんは「五段までは頑張れば技術でなんとかなる領域だが、その先は相手を威圧する『気』の会得が必要」だと話す。それには日々の稽古で格上の相手から受ける「恐怖」に立ち向かい、打ち克つしかないという。指導者として五段までは技術的な指導しかできなかったが、今後は「気」についての指導をもしていくという。
夢は範士八段
小林さんは普段は中原区内の香料会社に研究員として勤務する。稽古は、平日夜に塚越中学、土曜日午前中に石川記念武道館で週に2・3回。日課として重めの木刀での素振りを最低100回行う。得意技は相手が面を打ちに来たところで小手を打つ出小手だ。
剣道を始めたのは小学1年生。男の子には剣道をさせるという両親の方針で、初めのうちは嫌でよく泣いていたという。剣誠会の相談役兼指導者だった樋川芳久さん(故人)を今でも師と仰ぐ。小学3年生の頃、胴の裏に「和」の文字を書いてもらった。「人づきあいがうまくなかった自分に、人とのつながり、出会いを大切にしなさいと言う意味で書いてくださったんだと思います」と当時を偲ぶ。六段審査会には「先生」に力を借りるつもりで形見の胴をつけて臨んだ。
平間中剣道部では3年の時、県中学校総合体育大会、県中学校剣道大会で男子個人の部で優勝。高校は強豪・東海大相模高校へ進学。競技としての剣道は高校までと決めていて、大学進学後は学業に専念した。
高校卒業後は勝ち負けではない、精神を鍛える武道として稽古に励む。それまでは勝つことにこだわり、常に緊張をしていたが、「競技を離れて初めて剣道の楽しさを覚えた」と話す。
目指すのは剣道の最高位「範士八段」。「そこに立ったら今までと違うものが見えると思う。ゴールでありスタートでもある。その位置から剣道を振り返ってみたい」
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