「カン、カン、カン、カン…」。競輪レースで残り1週(半)になると、鳴らされる打鐘(ジャン)。選手たちは鐘の音を合図に、スピードを上げ、レースは佳境に入る。「ここには競輪のエッセンスが詰まっている」と川崎競輪でジャンを鳴らす打鐘員(だしょういん)の宮田信介さん(64)は話す。宮田さんは競輪を統括する公益財団法人JKA職員を定年退職後、嘱託で再び打鐘員として活躍する。8月5日から8日は川崎競輪場では「アーバンナイトカーニバル2021」(GIII)が開催。宮田さんは「レースと合わせて注目していただきたい」とも語る。
打鐘員は競輪の審判の一員。JKAのウェブサイトには、その役割についてこう明記されている。「先頭の選手が最終周回前回のバック・ストレッチ・ラインに到達したときから、先頭の選手が最終周回に入るホーム・ストレッチ・ラインに到達するまでの間打鐘により周回数が残り1周であることを通告する」
宮田さんはレースが残り2周となった時からジャンを鳴らすことを意識。周回員が残り1周を示すボードをめくると「おあと1周」と叫ぶ。それに呼応した審判員から確認のOKサインが出ると初めて木槌を握る。そして、ジャンを鳴らす際、審判員にもわかるように右腕を大きく上げる。「さぁ、ここからが戦いの始まりという合図。だから、選手たちに気持ちよくレースに入ってもらえるよう、そして聞き苦しくないよう、木槌が鐘のへそ部分に当たるよう神経を研ぎ澄ませている」と宮田さん。また、レースの状況によって鳴らし方を変えるこだわりも見せる。「ゆったりとしたレース運びの場合は、ゆっくりと打つ。早くなりそうな展開だなと感じた時には、ピッチを早めにしている」と語る。
宮田さんが手にする木槌には、テープがぐるぐるに巻かれている。ジャンを鳴らした時に割れて破片が飛び散らないようにするためだという。今から30年以上前、宮田さんは花月園競輪場でジャンを鳴らした際、木槌を割ってしまった。音がおかしくなりながらも最後までやり切ったが当時は「頭がパニックになった」という。そんな苦い経験から準備を万端にしてレースに臨んでいる。打鐘員としてのキャリアは豊富だが「それでも、ジャンを鳴らすのを失敗する夢を見てしまう」と宮田さん。
かつて、川崎の居酒屋で食事をしていた姿をファンに見られ、その翌日に行われたレースで観客席から「昨日、鯨の竜田揚げを食べてたろ」というヤジが飛ばされたという。「競輪ファンの方はいろいろなことに目を向けていることを感じた。身が引き締まった」という。
川崎区・幸区版のローカルニュース最新6件
|
|
|
マリエンで茶道教室4月19日 |
|
|