県立津久井やまゆり園(緑区千木良)で昨年7月26日に起きた元職員による入居者殺傷事件から1年が経った。24日には神奈川県と相模原市の共催で南区内の相模女子大学グリーンホールを会場に追悼式が行われ、約600人が参列。犠牲になった19人の冥福を祈るとともに障害者への差別・偏見を排し、障害の有無にかかわらず誰もがその人らしい暮らしを送ることができる「共生社会」の実現に向け、誓いを新たにした。追悼式後に取材に答えた加山俊夫市長は、事件を風化させないことの重要性に触れつつ、市内施設やその利用者が、地域の一員として連携を図れる社会を作り上げていく方針を示した。
追悼式に参加したのは施設関係者や遺族をはじめ、行政関係者や一般の人671人。式は全員での1分間の黙とうなどの後に、追悼の辞へ。登壇したのは塩崎恭久厚生労働大臣、佐藤光神奈川県議会議長、沼倉孝太相模原市議会議長、津久井やまゆり園を運営する(社福)かながわ共同会の草光純二理事長、同園家族会「みどり会」の大月和真会長、同園の入倉かおる園長の6人。
安倍晋三内閣総理大臣の追悼の辞は塩崎厚労大臣が代読し、被害にあった人々への哀悼の意を表すとともに「二度とこのような事件が繰り返されてはならない。誰もが自分の夢を持ち、自分の能力を発揮できる日本を皆様とめざし、政府を挙げて取組んでいく」と政府の姿勢を表明した。
登壇した大月会長は現在、議論が進むやまゆり園の再生について「今後50年、100年と続いていく施設であることを念頭に、19人の御霊とともに、皆様と力を合わせて取組んでいきたい」と家族会を代表し述べた。
その後、黒岩祐治知事が被害にあった19人全員の逸話を紹介。事前に黒岩知事自ら遺族などから聞き取った「寒い冬はラーメンを楽しみにしていたあなた」「新年会で和太鼓を楽しんでいたあなた」など故人の生前のエピソードを読み上げ、最後に事件後県が策定した「ともに生きる社会かながわ憲章」を朗読し、「誰一人として排除されない社会」の実現を、参列者全員で誓った。
今回の追悼式は県と市が初めて行ったもので、県の担当者によると来年以降も実施する予定。追悼式を巡っては、事件現場となり、やまゆり園が今年4月に横浜市港南区に移転するまで交流を続けてきた地元・緑区千木良の住民から「せめて緑区内で開催してほしい」など、地元住民が参加しやすい場所の選定を望む声が挙がっていた。来年以降の開催場所について担当課は、現在検討中とした。
障害者も「地域の一員」
追悼式後、記者会見を行った黒岩知事は「本来なら被害者の名前を申し上げ、遺影が飾られても不思議ではなかったが、今の社会はそれを許してくれない。本当の共生社会が実現すれば、こうした壁もなくなるだろう。それをめざしていく」と述べた。同席した加山俊夫市長は地域と施設の在り方を問われ「施設に入られる障害者も、社会の地域の一員として連携を図れるような形を求めていきたい」と答えた。
2016年7月26日未明に起きたやまゆり園での事件では、元職員による犯行で19人の入居者が死亡し、27人が負傷。社会に大きな衝撃と不安をもたらした。逮捕された元職員は障害者への差別的な思想を抱き犯行に及んだとされ、今年2月には責任能力が認められ起訴された。初公判の日程は決まっておらず、来年以降となる見込みだ。
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