市はこのほど、経済的な理由で高校進学が困難な生徒を支援しようと、返済の必要のない給付型奨学金を創設する方針を打ち出した。子どもの貧困対策全般へ活用される新たな基金の設立と併せて教育機会の均衡を図ることで、世代を超えた「貧困の連鎖」を断ち切りたい考えだ。市は今後、12月定例会議に関連条例案などを提出し、可決されれば奨学生の募集を開始する。
給付型奨学金は高校などでの授業料や教科書代などの教育費が対象。給付条件として、市内に居住していることに加え市民税所得割額非課税世帯の生徒であること、本人の学業への意欲があることが必要となる。
市では制度設計する上で成績にかかわらず、子どもたちへ平等に教育機会を提供することを重視。横浜市などが給付の条件として中学3年生の段階で一定以上の成績を残すことを要する「成績要件」を課しているのに対して、市では給付条件から「成績要件」を外した。市は市民税などの状況から、1学年あたり約300人が給付の対象となると試算している。
給付額は1人年間10万円。市によると、全国に20ある政令市の中で同様の制度では最高額となる。県が市民税所得割額非課税世帯の生徒へ年間約7万5千円給付する「高校生等奨学給付金」と併用すれば、公立高校1年間でかかる教育費の平均約24万円の7・5割程度はまかなえる形。入学時には支度金として2万円が別途給付される。
市の奨学金制度を巡っては、1962年から貸与型の奨学金制度を設け、教育機会確保に努めてきたが、県の実施する奨学金の方が貸与額が高く、返済免除制度もあることから近年では利用者が減少していた。市ではこうした状況を踏まえ、給付型を新設することで家庭の所得状況に起因し全国で問題化している「子どもの貧困」や「貧困の連鎖」を打破したい考えだ。これにより貸与型は今年度で廃止される。
予算規模は、貸与型の今年度予算が約107万円だったのに対し、給付型では予測される対象約300人分の予算を確保することから、1学年あたり3000万円ほど。3学年に適用される2020年には1億円を超える規模となる見込みだ。市の担当課では「子どもが夢と希望を持って進んでいけるよう支援していきたい」と話す。
市は、12月定例会議に関連する条例案と必要な費用を盛り込んだ補正予算案を提出し、可決されれば来年1月に奨学生の募集を開始。4月には奨学生が決定する。
「改良の余地ある」
市は給付型奨学金の創設と併せて、子どもの貧困対策へ「相模原市子ども・若者未来基金」も設置する方針だ。この基金は廃止される貸与型奨学金への基金の残高約3400万円と、故人から市へ遺贈された約1億9400万円が財源。
新たな基金は一部が奨学金に充てられるほか、子育て支援や若者の自立支援などの施策に生かされる。効果的な施策の実施に向けて子育て世帯の実態を把握するため、市では今年9月から一人親世帯を対象に教育状況や支援のニーズ調査を行っている。調査結果をまとめ次第、基金を活用した具体的な施策を計画していく予定。基金の維持について市は「施策を検証しながら、趣旨を広く知って頂き寄付を募りたい」と話した。
市内で無料学習塾の運営など教育支援に取組む「相模原みのり塾」の小布施実穂子代表はこうした動きについて、「良いニュースだと思います。ただ、対象生徒のニーズに合っているのか、対象要件を増やす必要があるのか少なくてもいいのか、給付のスタイルはどうするのか(現金かクーポンか)など、今後の改良の余地はあると思います」と話す。
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