就労移行支援事業を主体に運営している障害福祉事業所「ワークショップ・フレンド」(南区麻溝台)では現在、18歳から48歳までの知的、精神障害者が企業から請け負った製品の製造作業に励みながら就職をめざしている。障害のある人への支援のため、緊急事態宣言下でも県市から感染防止対策を取りながら事業を継続するよう要請を受け、活動を続けた。それでも、コロナ禍での活動はすべて手探りで、利用者の様子にも配慮するなど対応への難しさがあった。
感染防止対策を取るようになったのは3月に入ってから。とりわけマスクと消毒液の確保が難しく、マスクは利用者や職員それぞれに用意してもらうなど初めは調達に苦労したが、厚生労働省から4月下旬にガーゼマスクが支給され、消毒液は企業や地域住民からの寄付もあり、持ちこたえることができたという。
そうした中、通勤時の感染を恐れて利用自粛を申し出るケースもあったが、密集を避けるための調整、時差出勤や利用自粛希望者への在宅支援などの対応を行った。
一方で、利用者自体に大きな声を上げるなどの異変が起こる。同所で毎週土曜に趣味などを楽しむ場となっていた余暇活動が自粛され、日常の楽しみがなくなった利用者は慣れないマスクの着用や私語を慎むといった新しい生活様式によってストレスが溜まり、次第に心に余裕がなくなっていく。利用者の中には生活リズムを乱す人や、イライラして作業が手につかなかったり、家庭で情緒不安定に陥る人などさまざまな変化が現れた。知的・精神障害者は気持ちの制御や切り替えを苦手とする点も影響した。
コロナ禍は事業運営にも影を落とした。作業依頼は減り、最も悪いときには通常の6割まで落ち込んだ。企業での実習もなくなり、利用者の就労の機会も奪われた。いつもなら4月から6月の間に複数の利用者の就職が決まっていたが、今年は見通しが立たない。同所を巣立って就職した人を職場などで面談してサポートする就労定着支援サービスについても、感染拡大防止の観点から面談ができず、電話で様子をうかがっている。だが、対面でこそ実情がつかめる支援であるため、不本意な形だ。
同所を運営する社会福祉法人すずらんの会理事長の松屋直人さんは、利用者が不安を抱える中で重要な点は「いつも通りの生活」をいかにして過ごしてもらうかだという。「利用者の心を安定させ、リズムを崩さないようサポートする。コロナ禍で改めてその大切さを再認識した」。その上で、「こんなときでも企業の方々に障害者雇用を理解してもらい、採用活動を鈍らせないでほしい」とも要望する。
事態を恐れ過ぎず、不断のケアに努め、利用者の心の安定を図る。コロナ禍で新たにした、職員たちの切なる思いだ。
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