町田 コラム
公開日:2018.12.13
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の45
タイと陛下
「プラーニン」、タイの人は誰しもが知っている魚の名前。1960年代、食糧危機の国民を救った魚で、今も常食として定着している。プラーニンという読みは華僑が名付けた「仁魚」をタイ語読みしたもので、「仁」は現天皇陛下の皇太子時代の名「明仁親王」の一文字だ。魚類学者でもある親王はタイ王国にナイルティラピア(写真【1】)を贈り、食糧難を乗り切るための養殖を提案した。環境も適していたため順調に繁殖し、タイの国民にとって貴重なたんぱく源として定着するに至った。タイ国民はこのいきさつを誰もがよく知っていて、こんなところも親日国である大きな要因だ。ところが、この話を我々日本人は知る人が少ない。これはお国柄にもよるもので、タイの国民は理屈抜きで大統領よりも国王が大好き。国王が緑の服が好きと言えばこぞって緑のTシャツなどを着るほどだ。国王の逸話などもごく当たり前に国民の話題となっている。さて、日本はというと、昭和から象徴天皇となり、陛下の各所御訪問などがニュースにはなるものの詳細なストーリーが頻繁に語られることはまれだ。タイ人に言わせれば、「日本人はなぜ我々を救った明仁親王(元天皇)の功績を広めないのだろう」と憤ることだろう。
このティラピアは日本でも戦後の食用魚としてイズミダイやチカダイの名で養殖されたが、秋冬の水温を保持するのにコストがかかる上に、現在では鯛の養殖が盛んになって価格が下がったこともあり、ティラピアの養殖をするところも少なくなり、某スーパーでまれに見られる程度だ。全く別種なのにやたらと〇〇鯛と名付けるのは日本の良くない傾向で、ティラピアも例外ではなかったが、エボダイ、ブダイ、フエフキダイ、イシガキダイなどと違い、肉質や味はティラピアの方が鯛に似ている。ただし、日本人は見た目重視のところもあるから受け入れ難かったのかもしれない。
一方でブルーギル(写真【2】)は1960年にシカゴ市長から明仁親王に研究用として15尾が寄贈された。研究機関は食用になるとして伊豆の一碧湖に試験放流し、その後は何者かが方々の湖へ。私も河口湖で釣って食べたが、見た目はともかく食べてみると淡白で美味しい。ただし骨が太くて多い上に、処理する際にヒレのとげが刺さるため厄介だった。釣ったブルーギルをその場で切り身にして釣り針に付けると、またブルーギルが釣れるというかなりの悪食で、食用よりもゲームフィッシュとして注目され、釣り具メーカーや釣り雑誌の関係者の釣り人が沼や湖に放流していたという残念な記録もある。そしてブラックバス同様に繁殖力旺盛。在来のワカサギやモツゴなどに大ダメージをもたらしている。滋賀県の琵琶湖では絶滅した在来魚もあり、伝統漁業を守るため、リリース禁止を呼び掛けて少しずつだが効果が見えてきているらしい。研究だけとはいえ現状を招くきっかけを作ってしまったことに、天皇陛下は深く心を痛めているという。生き物の引っ越しは難しい。在来種と共存できるかどうかしっかりと調査研究した上で慎重に慎重を重ねる必要があるようだ。
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