78世帯が暮らす市内北西部の山間にある小津地域は、利用者減少によって廃止されたバスを「町営」にして存続させるなど、少子高齢化に力強く挑んでいる。昨年4月に有志で結成した「NPO法人小津倶楽部(前原教久代表理事)」は、空き家を拠点とした郊外ならではの魅力発信に取り組んでいる。
周囲を山と森で囲まれた倶楽部の拠点「おもむろ」は空き家を借り、ボランティアを含めて約80人いるメンバーで約1年半前から少しずつ手直ししている。
作業にかかる前までは、壊れたままのカーポートが放置され、庭には雑草が生い茂り、道路側から空き家の様子も見えない状態だった。草を刈り、木の根を抜き取るなどの作業を重ね、今では手製のベンチを設置してくつろげる空間になっている。「大人の遊び場というか、秘密基地というか、好きなようにできるから、みんな開拓するのを楽しんでいます」と前原さん。
都市部と交流必要
町内には6軒の空き家が点在し、耕作放棄地もある。「静かな環境を残すためにも大規模な宅地化は望んでいない。しかし高齢世帯が多く、今は自分で運転して買い物に行ける人でも5年後、10年後にはどうなっているか」。少子高齢化を見据え、都市部との交流や若い世代の入居につながる環境整備に着手することは急務。考えついたのが空き家の活用。「空き家を整備して貸し出すのは家主さんにとって費用負担が大きい。また、知らない人に貸すのは不安もある」。そこで、倶楽部を立ち上げ、自分たちで空き家を整備して管理運営することに。町会活動ではなくNPO活動にすることで、町外の協力者も獲得できた。「おもむろ」はイベント・拠点スペースとして残し、今後、話がまとまれば他の空き家も整備して「定住用」として貸し出すことも考えている。耕作放棄地だった雑草に覆われた土地は倶楽部によって耕され、ピザやうどんの材料になる小麦が植えられている。昨年60本植えたオリーブは小津の特産品になるかもしれないと期待がかかる。
毎週土曜日に10人ほどが集まり、畑仕事や家の改修など思い思いに作業をし、終了後は庭で団欒を楽しむ。小津には重機やトラクター、チェーンソーを持っている人もおり、「開拓」は本格的だ。庭の脇にはピザ窯と水場を兼ね備えた作業場を設置した。ピザ焼き(まき割り)体験や花見などのイベントを行えば、雄大な自然の中の「秘密基地」に惹きつけられて町外からの参加者が平均して40〜50人ほど訪れるという。倶楽部でも当初、これほど多くの人が来るとは思っておらず「暮らしていると、当たり前過ぎて『貴重だ』と気づかないことばかり」と改めて地元にある自然の「価値」に気付いた、と前原さん。
弾き語りイベント
6月23日(土)にはおもむろで山里の古民家の雰囲気を活用して女優・林洋子さんによる琵琶弾き語り「なめとこ山の熊」(宮沢賢治原作)が行われる。午後1時開場、2時開演。武蔵野うどんや窯焼きピザがついて大人4000円。地ビールの高尾ビール(有料)もある。事前予約制で先着40人まで。申し込みは前原さん(【携帯電話】090・2236・7112)へ。
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