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八王子版 公開:2018年8月2日 エリアトップへ

垣根超え高齢者ケア 2025年問題見据え

社会

公開:2018年8月2日

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昨年の設立総会の様子
昨年の設立総会の様子

 人口の3人に1人が65歳以上となり、深刻な高齢化社会が訪れるとされる2025年問題。八王子では病院や歯科、介護施設などが垣根を越えて協力しあう「NPO法人 八王子市民のための医療と介護連携協議会(孫田誠三理事長)」が先駆的な取り組みを進めている。

病院、介護業者らでNPO

 同協議会は昨年6月に設立。医師会、歯科、薬剤師、介護保険事業所、福祉法人など高齢者にかかわる市内9の組織が参加している。「市町村単位でこれだけ多岐にわたる多くの職種が集まっている組織はないと思う。1人の専門家だけではなく、他の業種と連携しないと分からないことも多い」と理事長の孫田さん。最終的には患者が住み慣れた地域で最後まで生活を送ることができる環境を作るのが目的だ。孫田さんは「病床数的にも希望者全員が入院するのは無理がある。できるだけ自宅にいながらにして高度な医療・介護を提供することで『家の中で入院している』状態を目指すべき。その場合、介護している家族も含めてみる必要がある」と話す。そのためには、各分野の専門家の連携が不可欠だという。

「顔が見える」取組

 同協議会では講習会を通じた業種間の連携も進めている。市内でデイサービスなどの事業を展開する(株)やまびこケアセンターの社長・君島信郎さんは「デイサービスは小規模な事業所も多く、ヘルパーの技術向上のためのセミナーに講師を招くことが難しい」と話す。同協議会の事務局に相談することで、これまで繋がりのなかった地元の医師に来てもらえるなどセミナー内容が充実してきたという。「ヘルパーのために『腰に負担をかけない方法』を理学療法士が教えてくれたことも」と君島さん。職種を越えた交流も生まれている。

 八王子では3年前から、在宅療養支援のため医療・介護の関係者が患者情報をパソコンで共有する「まごころネット」を医師会で導入し、スムーズな診療や介護につなげている。協議会の活動はさらに一歩進んで「高齢者に関わるスタッフの互いの顔が見える」取組みといえる。「まごころネット」も多職種がかかわることの多い同協議会で引き継いでいくことが想定されている。事務局長の平川博龍さんは「世界的にみて日本は『高齢化の先進国』。高齢者に関わる人たちの参考になるような取組みにしたい」と話す。

多業種つなぐ工夫

 同協議会には八王子市医師会、東京都八南歯科医師会八王子支部、八王子薬剤師会、東京都理学療法士協会八王子支部、八王子介護保険サービス事業者連絡協議会、八王子市社会福祉法人理事長会、八王子社会福祉士会、八王子市医師会立訪問看護ステーション、八王子介護支援専門員連絡協議会が参加している。これら各団体の代表が協議会の理事を務める。

 平川さんは「医療や介護にかかわる職種の間で交流する機会は増えてはいるものの、職種間にまだまだ壁があるのは確か。直接言いにくい意見でも協議会が間に入って伝えることで円滑な連携を目指したい」と話す。また「有効な事業であっても事務機能を負担することができずに終わってしまうこともある」としており、上記の参加団体の事務機能の一部を負担して支援していくことも協議会の役割だという。

家の中のことはわからない医師・孫田さん

 「ヘルパーなど、一緒にいる時間が長い人の方が患者の様子を知っていることもある」。孫田さんは「患者が医師に言うことと、看護師やヘルパーに言うことが異なるのは、病院でもよくあること」と話す。医師のプライドを傷つけないように配慮する気持ちが働くのだという。医師であることが逆にハードルとなり、正確な情報が入ってこない心配があるのだ。「家の中のことは、介護をして日常生活をみている人でないとわからない。だから『患者の容態が良くなっている』という情報だけでもありがたい」。患者の本当の状況を知るためには、医療と介護が協力しあう必要があるという。「相談の電話をかけてくる相手の顔が思い浮かぶかどうかが大事」。協議会設立から1年、信頼関係が出来てきている実感も高まっている。「理事会でシーンとした場面はほとんどない。どんどん意見が出てくる」

気軽に「聞ける」関係デイサービス・君島さん

 「例えば、介護のために高齢者の自宅に行って飲まずに放置してある薬を見たとき、どうすればいいのか。また、皮膚が赤くなっている部分を見つけたとき、どこにどう相談すればいいのか迷わずに済む」。不調の兆候を見つけるのはヘルパーであることが多いが、医療的な素養がなければ、どの程度深刻なのか、どこに相談したらいいかも判断がつかない。それが、協議会のおかげで、セミナーが充実したことで「歯科医や薬剤師の視点を考慮して多角的に高齢者のことをみることができる」ようになってきた。君島さんによると、協議会の活動によって、気軽に相談できる環境が生まれてきているという。「理事会などで会うたびに医師の方から『何かあれば声かけてよ』と垣根を越えてきてくれている」。そういった雰囲気が生まれることで、医師に問い合わせの電話を入れやすくなっているそうだ。

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