京王八王子駅近くで全盲の宮川純さん(41)が20、30代と思われる男性とぶつかり、中傷する言葉を投げつけられた事件は先月、全国的に話題となった。「東京でのパラリンピックが1年後に迫るなか、視覚障害者への理解が進んでいないことが残念」と宮川さんは話している。
突然だったという。明神町にある、宮川さんが副理事長を務める「八王子視覚障害者福祉協会」への通勤路。JR八王子駅から向かう途中の京王八王子駅近くで正面からぶつかった。「白杖を落としてしまい、少し間があったので拾ってくれるのかなと思ったんです」と宮川さん。
そう思っている間に右足を蹴られ、「目が見えないのに一人で歩くな」といった言葉を投げつけられた。「人とぶつかることは、白杖をもって歩いていると日常茶飯事のこと。そういった言葉を受けたことに驚きました」
ぶつかったことにより折れてしまった白杖を拾い上げてくれた人が「相手は20、30代ぐらいの男性だった」と話し、宮川さんがスマートフォンが落ちるような音を聞いていたこともあり、相手は「歩きスマホの男性」という話が広がっている。
宮川さんは「東京でのパラリンピックが迫るなか、健常者と障害者の共存社会を目指そうといった言葉が広がるのに、何のためのバリアフリーなのかと考えてしまいます」
事件後に啓もうを兼ねて宮川さんがツイッターで事件について呟くと全国各地から「元気を出して」というメッセージや寄付金が寄せられたりしたのだという。長野県に住む小学3年生からは「私は何をしたらいいですか」という電話があったと言い、「それでは夏休みの自由研究でバリアフリーについて調べてみて下さい」と答えたと宮川さん。「皆さんの声は力になっています」
「支援が遅れている」
視覚障害者にとって八王子はどのような街なのか――。宮川さんに聞くと「支援が遅れていると考えています」と。
例えば、一人で外出が困難な視覚障害者などのサポートにあたる「ガイドヘルパー」と呼ばれる行政サービスを受けられる時間は八王子の場合、月40時間。
だが、周辺市は50時間を超すところも少なくなく、23区内には80時間に及ぶ街もあるという。「行政の障害者への理解が不十分なのだと思う。市区町村格差は無くすべき」と宮川さん。また、健常者と障害者の「共存」を周知する努力が足りないとも話す。
そんななか宮川さんは、障害者に給付される日常生活用具のなかにタブレット端末を追加するよう市に働きかける動きに参加したり、道路法で点字ブロックを設置することのできない協会事務所前の道路にオリジナルの点字ブロックを取り付けるなど、視覚障害者が住みやすい街に向けた取り組みを進めている。
八王子市の障害者福祉課の担当者は「障害者への支援は限られた予算のなか、ニーズに対し総合的に判断して対応を決定している」と話している。
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