奥田染工場(中野上町)の代表で「八王子市ものづくり産業表彰」を受けた 奥田 博伸さん 清川町在住 40歳
残したい原風景
○…多彩な染色技術を持ち、多摩美術大学の技術講師も務め、CMの衣装作りも手掛けるなど活動の幅は広い。特徴的な長髪は「いつもお願いしていた美容師さんが海外に行ってしまったので3年くらい伸ばしっぱなし」。仕事着は同じものを1週間分5着をそろえる。「服選びで悩むのが面倒なので」。気になることは何でもとことん調べる性格。仕事では依頼主に対して「自分が納得するまで」そのコンセプトを聞きだす。
○…八王子で生まれ育った染物工場の4代目。生まれたころには、すでに産業は衰退期だった。「父は畳むつもりで減らしていたようです」。子どもの頃は10人いた職人が、22歳で会社に入った頃には2、3人になっていた。現在は自身と母親、若手職人2人の4人で切り盛りする。「作り手の雰囲気が重層的にしみ込んだ景色――。そんな自分にとって当たり前のものに価値がある。さらに歴史を積み上げていきたい」
○…後進の育成や人と人をつなぐことにも尽力し、全国の織物業の産地を見学する。「町全体が服のロゴだけ作っているなど、産地は何かに特化していることがほとんど。八王子は消費地(都心)に近いので、センスが良い傾向がある」。地域の特徴を生かして「シルクロードの頃のように、八王子が人やモノをつなぐ新しい『ハブ』になれれば」
○…「作る技術だけが尊いわけではない。それがどう使われるのか知る必要がある」。ものづくりの現場という自分にとっての原風景を守るため、最近は経営者たちと話すことが多いという。「日本の繊維業界はあと5〜10年で明暗が分かれる」。そんな危機感に対し、前向きに立ち向かう。「可能性がないわけではない」
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