八王子の社寺建築に詳しい相原悦夫さん(80・元本郷町在住・八王子市文化財保護審議会会長)がこのほど、市内5社、9カ寺の概要や作り手についてをまとめ1冊の本にした。社寺建築の分野では自治体が作る報告書や記録などに留まり、一般に流通する刊行物はほとんどない。八王子市郷土資料館(上野町)は「一般の人にもわかりやすく大変ありがたい」と話す。
刊行物は皆無
5社9寺
「建物自体についての資料も少ないですが、それを誰が作ったか?という点もほとんどない。作り手の名前などを知って欲しかった」と、相原さんは執筆の動機を話す。書名は「八王子の社寺建築」。モノクロA5版でおよそ70ページ。大横町の極楽寺、元本郷町の多賀神社、山田町の広園寺、鑓水の八幡神社など合計14の建物を紹介している。
相原さんが社寺建築に興味を持ったのは少年時代。土木工事をしていた父に付き添い、市内の神社仏閣をめぐるうちに関心が高まっていったそう。一方、三鷹市の職員として長く同市の市史編纂などに従事する中で編集のノウハウを身に着けたという。昭和50年代以降は関東一円の社寺建築を視察するようになり、これまで合計15冊程を上梓している。
今回の本は相原さんがおよそ50年前、市内の各社寺の社殿や堂宇(建物)の調査を行った際の資料を基に、改めて内容を確認するなどし2年がかりでまとめたもの。内容の特徴としては「建築物の梗概(こうがい)(あらまし)、建築上の特性、意匠、装飾彫刻と建築に関わった大工棟梁、彫物大工らその文化の担い手の存在にスポットライトを当てるなど、一般的にはほとんど知られない領域に意を注いだ」と話す。
図書館などに
「私家本」として50部を発行。全て相原さんが手作業で製本した。販売はされていないが、市内では中央図書館(千人町)をはじめ一部の図書館や郷土資料館で読むことができる。相原さんは「八王子の社寺建築文化史を知る資料として、後世に伝え残し、次代の研究者、学習者の参考になれば」と期待する。同館では「館としてこれまで社寺建築の調査をしたことはないので、とても貴重な1冊。一般の人にもわかりやすく作られており、大変ありがたい」と話した。
なお、このような建築美術を残していくために大切なポイントとして相原さんは「まず、技術者を絶やさないこと。そして市民や周辺住民が一体となって保全に力を入れていくこと」の2点をあげた。
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