生活の中に｢勝負｣あり

　○…「生活の中に勝負あり」と書かれた紙を練習場の壁に貼っている。技術面の指導もするが、何より口を酸っぱくして注意するのはあいさつや聞く姿勢などの社会性だ。「技は練習すればある程度できるようになる。だけど、あと一歩の勝敗を分けるのは普段の生活態度」。28年間の顧問人生から、勝利の真髄を導き出す。

　○…青春時代は卓球部で汗を流した。八王子市内の高校で、女子の先輩に見惚れての入部--ではあったが、そこで待っていたのは新任の男性教諭。次第に卓球にのめり込んでいく中、社会的態度を徹底して説き、一人の人間として基礎をつくってくれた人だ。「この先生がいたから教員の道に進んだし、卓球部の顧問もやっている」。現在、部員への接し方や注意のあり方は、恩師による影響が大きい。

　○…コロナ禍は教員人生の中で一番と言っていいほど大きな出来事だった。練習ができず焦る中、オンラインミーティングで部員が「（今の状況は）無いものねだり」と言った。毎日練習していたときは「もういい」と思い、いざできなくなると「やりたい」と思う。人間とは所詮そんなもの。だからこそ「今やれる環境に感謝しなきゃ」と視界が開けた。指導スタイルも変わってきた。今まで自身が指示していた練習メニューに、部員たちで話し合ったメニューが加わるようになったのだ。

　○…愛知で今週末行われる全国選抜大会に出場する。遠方から通う部員も多く、文武両道とうたい勉強面にも力を入れる同部。練習時間は１日１時間半ほどで、周りの強豪校よりもシビアだ。目指すはもちろん上位入賞だが、「それが一番の目的ではない」。人として成長するため、卓球を通して何を学ぶか、だ。