料理は苦手　だからこそ

　○…「食育ソムリエ」とは、野菜などの選び方やおいしい調理法、保存方法などをアドバイスできる人。地場農産物の需要を広げるため、日本協同組合連携機構（ＪＣＡ）が独自に認定している制度だ。全国に３５００人以上いるなかで、卓越した業績をもつ人に贈られる「エンパワラー」として表彰された。うれしさ反面、「自分がもらっていいの？」と驚きを隠せない。

　○…長沼町で夫と農業を営み、直売所「菱山ファーム」を経営している。コロナの影響で現在は休止しているが、年に数回直売所で「おかず会」を実施。客や他の生産者が自慢の野菜料理を持ち寄るのだ。ただ自身は「料理が苦手」。だからこそ、知らないことは「お客さんに教えてもらう」スタイル。２０１１年に行った初回の持ち寄りテーマは菜の花。キッシュやお好み焼きなど「並んだ皿は20皿くらい。私はおひたしくらいしか知らなかったのに」と相好を崩す。

　○…東京都練馬区生まれ。結婚が決まった夫の実家がナス農家だったので、「いずれは自分も」と思っていたが、結婚半年後には夫は会社を退職。予期せぬ農業生活のスタートだったが、だんだんと仕事を任せてもらえるように。変わった品種の種を見かけると、「どんな味がするのかつい買ってしまう」。そして客からの「これ、どうやって食べるの？」に応えるためにも、食育ソムリエの資格を取った。

　○…「食事の話は実家や郷土の話につながる。誰とでも、すごく距離が縮まる」。農業に従事して約30年、食でつながる人の縁を大切にする。食育ソムリエとしての次の構想は「体験型直売所。買いたい分だけ、その場で畑から収穫してもらう。自分で採った野菜はずっとおいしいのよ」