大和 コラム
公開日:2019.12.06
徒然想(つれづれそう)
連載 261花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今年、五月に元号が「令和」に変わり、十月に即位礼正殿の儀があり、何か今年は例年より早く月日が流れたように思います。一年の最後の月は「空中では種子は生(は)えてこない」です。
出典はインド、大乗経典『大宝積経(だいほうしゃくきょう)』迦葉品(がしょうぼん)第七十二節です。
経典では次のように説いています。「カーシャバよ、空中では種子は生えてこない。それと同じように、転変(世の中が移り変わること)のないところで仏法が生長することは、過去にもなかったし、未来にもないだろう」と。
釋尊は、ものの成り立ちを総合的に、また、総体的に考え、観察します。その為に悟りを得るためには煩悩を除かなければならないというそれまでの修行観を否定し、悟りも煩悩も一つの心の表裏二面の現れだと考えて、煩悩を糧にして悟りを得る方法を喩しています。種子は肥料や水分を含んだところに植えなければ芽を出さないことを教え、菩薩といえども煩悩に満ちた世界のなかで修行してこそ真の悟りを開くことができたと、私たちを教え導いているのです。 桃蹊庵主 合掌
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