健康都市大学講師の最年長で礼法を伝える 広田 志げるさん 市内深見在住 92歳
老いてなお甘えなし
○…しゃんと伸びた背筋、芯の通った声。140cmの小柄な体できびきびと動く姿は、とても90代には見えない。健康都市大学で礼法を教えるほか、ボランティア講師の会でも着付けを教えるなど日本文化の発信に取り組む。「この年で社会に必要とされるのは嬉しいこと。講義は緊張するが楽しい」と溌剌と笑う。
○…富士市で育った三姉妹の末っ子。名前の由来である吉田茂にも劣らない男勝りな性格で、挺身隊に憧れ、女学校卒業後は東芝の工場へ。翌年、終戦を迎えた。「真隣の防空壕に逃げた人は皆死んだ。そこで人生終わってもおかしくなかった」。花嫁修業後に結婚するも離婚。タブー視され「逃げるように」神奈川へ。再婚後、大和で心機一転、幸せな家庭を築こうとしたが夫はアルコール中毒となり、思い悩む毎日。夫は入院を経て断酒したが、1997年、不慮の交通事故で急逝した。「苦労のどん底を何度も味わった。ただその分だけ、人に優しくなれた」
○…南林間の職場近くにあった着付け教室に通い始めたのは50代の頃。生前の夫も、裁縫の先生だった母も喜んでくれた。「行儀知らずの私が、資格をとり40年も続くなんて。親不孝の娘だったけれど、着物を着られることだけは救い」とゆっくり、天を仰ぐ。
○…ソクラテスの名言「ただ生きるのではなく、よりよく生きるのだ」を実践してきたことが長寿の秘訣。「マンネリが嫌い。技を習得すると、人を助けられ、我が身も助ける。それが生きがいになるの」とにっこり。冷蔵庫に貼っているという好きな言葉は「老年に甘えている暇はない」。自戒は齢とともに強くなる一方。毎晩スクワット百回をこなしながら己に向き合い、明日へのエネルギーを蓄える。
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