大和 コラム
公開日:2020.06.05
徒然想(つれづれそう)
連載 267花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は仲夏になり、野山の緑も濃くなって、すべての風景が夏模様となります。
今月は「大(おお)よそ修行は、時を知る第一とす。もし時を知らざれば、無益の功徳を費やし、かえって己が道力(どうりき)を損ず」です。
出典は、江戸、藤嶺円慈(とうれいえんじ)『快馬鞭(かいばべん)』です。
意は「修行とは、適切な時期を知り、その時々にかなった修行をすることが一番です。それがわからなければ、無駄な努力をすることになり、かえって自分のもっている道力(道を求めようとしている力)を駄目にしてしまう」です。この文言は、悟りに至る禅の修行は、農作業と同様で、その時期に応じて適切にしなければならないと言っています。
一般に、農業は自然の摂理に従い「春は耕し、夏は雑草を取り、秋は収め、冬は蔵すが如し」と言われます。また肥料や農薬の散布も、適した時期と分量が定められています。いずれも過ぎると、作物への悪影響はまぬがれず、労力すべて無駄になってしまいます。これは、いかなる道にも同様な事が言えるのではないでしょうか。
世阿弥の「風姿花伝」の「年末稽古条々」は、能楽の修行のあり方を年代別に示したものですが、ここに示された適切な指導は現代の私たちにも当てはまります。
桃蹊庵主 合掌
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