徒然想 連載277 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は室町の名僧、一休宗純(いっきゅうそうじゅん)の歌、「今日ほめて 明日悪くいう 人の口 なくも笑うも 嘘の世の中」です。
「トンチの一休さん」として有名ですが、この一休の「頓智(とんち)ばなし」は、すべて後世のつくり話です。しかし、数々の「頓智ばなし」が現代まで伝わっていなければ、一般の人々にこれほど親しみ深い禅僧にはならなかったと思います。
師が当時の一般の人々のために、禅の教えを読み込んで作られた「道歌」が六百首以上あると伝えられています。
人に親切にし、あれこれと世話をし、その人から感謝の言葉やお礼がないと、少しでもいいからお礼の言葉だけでもほしいと思う。
そこで師は教える。見返りを求めるような親切は本物の親切ではない、そういう事を期待してはいけないと。人から「うれしかった、ありがとう」と言ってもらいたい、と自分勝手に考えるようでは、まだまだなのです。
今日は人からほめられたのに、明日はダメな人と貶(けな)される。他人の口、世間の評判は、善くても悪くても、だいたい真実ではなく、正しい評価でもない。
師は歌に託して説きます。他人の評価ばかり気にしていると、迷っていて前に進めない人生になる、と。
桃蹊庵主 合掌
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